DIMEという考え方
2021.05.27
突然だが、「DIME」という考え方をご存知であろうか。
答えを先に言うと、「D」=ディプロマシー(外交)、「I」=インテリジェンス、「M」=ミリタリー(軍事)、「E」=エコノミー(経済)の四つの頭文字をとって「DIME」と呼び、これら四つを組み合わせた総合的な「国家戦略」のことを言う。

昨今、評論家の江崎道朗氏が提唱し、雑誌、講演などでよく書いたり、話をしたりするので、耳にすることが多くなったと思うが、実は、米国、中国はこの考え方で「国家戦略」を進行している。読者の皆さんは米中貿易戦争他、米中対立、そして、EU諸国の中国への対応をどう見ているだろうか。
過去の話になるが、トランプ政権の目的は、「貿易赤字解消」や「知的財産権の保護」といった経済面だけの問題ではなく、「DIME」、つまり、外交、インテリジェンス、経済でのたたきを念頭に、トランプ政権は経済・通商での戦いを仕掛けたのだということであった。

では、日本はどうであったろうか。第二次安倍政権下で創設した国家安全保障会議(NSC)が総理大臣による「DIME」の総合判断がシビリアンコントロールの本体であり、有事における総理大臣の戦略的指導の正体である。そして、「DIME」を考える組織なのである。この組織が縦割りの日本の官僚体制に布石を打ち、米国との安全保障戦略を練っているのである。

月刊正論2020年4月号で国家安全保障局次長だった兼原信克氏が論文「このままではこの国を守れない」を寄稿しているので、チャンスがあれば読んでもらいたい。根本的な考え方が書いてあるので、お勧めする。そして、その中で、安全保障関連法など、NSCが土台を作ったとする中で、「自衛隊の統合運用、防衛産業政策、サイバー民間防衛、科学技術流出阻止問題など、まだこれからの課題です。やり残したことは多く、このままではこの国を守れません」と言っている。日本の安全保障はまだまだ不十分なのである。

では、日本には展望がないのか。
前述の江崎氏の著書『知りたくないではすまされない~ニュースの裏側を見抜くためにこれだけは学んでおきたいこと』で「日本だけが手にしている『三つのカード』がある」と記している。国際政治、特に日米関係における「日本の強み=①莫大な金融資産。②外交力、特にアジア太平洋諸国との関係。③ロジスティック。米国は以上の三つにおいて日本の協力が絶対必要になるという。そして、まかり間違っても「トランプ政権が中国共産党をやっつけてくれるから安心だ」と胡坐をかき、米国頼みに陥ってはならないと江崎氏は言う。そして、今やバイデン政権。日本の在り方は、トランプ政権時よりも役割は大きく、かつ重要である。

では、日本はどうすべきなのか。
その道標として、前述の著書の「おわりに」にそのヒントがあるので紹介する。
「1960年代後半から岸信介首相や福田赳夫首相らのアジア問題のブレーンであった中島慎三郎先生は、一民間人でありながら、その事務所には、ASEAN諸国の政治家や外交官、軍人たちが連日のように訪れていた。私が知遇を得たのは1990年のことで、ベトナム戦争に関与した旧日本軍の元情報将校の話とか、ASEAN結成にかかわる日米両国の対立など、驚くべき話をいくつも聞いたし、その関係者にも合わせてもらった。あるとき、『日本を守るうえで、何が一番大切ですか』と尋ねたら、即座に『敵を知ることだ』との答えが返ってきた。『敵とは誰のことですか』とさらに聞いたら、その答えは次のようなものだった。『日本を滅ぼす力がある国は、ソ連と中国、そしてアメリカの三カ国だ。よってこの三カ国の内情を死に物狂いで調査し、その上前を撥ねるつもりでこの三カ国に立ち向かわないといけない』。本書が国際政治を論じつつ、アメリカの内情を詳しく描いたのは、中島先生の教えによるものだ。間違った情勢分析は国を滅ぼしかねないことを、我々は先の大戦で学んだはずである。その過ちを繰り返してはなるまい」。

4月16日、菅義偉首相とバイデン米大統領がワシントンで会談を行った。大統領就任後、初の対面会談であった。その中で、両首脳は、中国による東・南シナ海での力による現状変更や威圧的な行動に反対することで一致。対中国を念頭に「抑止の重要性」を確認し、同盟の一層の強化を約束した。そして、日中国交正常化前の1969年、佐藤栄作首相とニクソン米大統領の会談以来、日米首脳が共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調し、 台湾に言及した。しかし、この共同声明後、中国による台湾、尖閣、沖縄への軍事行動は激しさを増し、一触即発の状況にある。

安全保障が一触即発にあるにもかかわらず、その論議が国会で大きく取り上げられないのはいかがなものか。

「敵を知る」=「中国は2049年までに世界を侵略する」

マイケル・ピルズベリー氏が『Chaina2049』の著書の中で以下のように記している。
「過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年にあたる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する」

中国はこの野望を実現するためにありとあらゆる手段を講じてきている。このことを我々は肝に銘じ、中国の脅威に備えるべきである。そのためにも、中国が「過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく」如何にしたたかに、日本潰しに行動を起こしているかを知り、国際情勢は「DIME」の考え方によって行動を起こしている中、日本の安全保障環境を整備するため、防衛費アップに国会議員は声を大にしていくことをつとに願う次第である。
2021.05.27 16:16 | 固定リンク | その他

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