戦後78年目の夏
2023.08.15
今年もまた、8月15日「敗戦の日」がやってきた。忘れてはならない4つの日の一つである。
「忘れてはならない4つの日」とは。
一つは6月23日「沖縄慰霊の日」、二つは8月6日の「広島原爆の日」三つは8月9日「長崎原爆の日」、そして、8月15日の「終戦の日」であり、上皇陛下はこの4つを「忘れてはならない日」として挙げている。
78年前のこの日、正午に昭和天皇による「終戦の詔書」は、ラジオで玉音放送が流れた。
その全文を以下に記したい。
【原文】
朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現狀トニ鑑ミ 非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ 茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク
朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ 其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ
抑ゝ帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ 萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ 皇祖皇宗ノ遺範ニシテ
朕ノ拳々措カサル所
曩ニ米英二國ニ宣戰セル所以モ亦 實ニ帝國ノ自存ト 東亞ノ安定トヲ庻幾スルニ出テ 他國ノ主權ヲ排シ 領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ 朕カ志ニアラス
然ルニ交戰已ニ四歳ヲ閲シ 朕カ陸海將兵ノ勇戰 朕カ百僚有司ノ勵精 朕カ一億衆庻ノ奉公 各ゝ最善ヲ盡セルニ拘ラス 戰局必スシモ好轉セス
世界ノ大勢亦我ニ利アラス
加之敵ハ新ニ殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ 頻ニ無辜ヲ殺傷シ 慘害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル
而モ尚交戰ヲ繼續セムカ 終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス 延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ
斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ 皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ
是レ朕カ帝國政府ヲシテ 共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ
朕ハ帝國ト共ニ 終始東亞ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ對シ 遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス
帝國臣民ニシテ戰陣ニ死シ 職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及 其ノ遺族ニ想ヲ致セハ 五内爲ニ裂ク
且戰傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ 家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ 朕ノ深ク軫念スル所ナリ
惟フニ今後帝國ノ受クヘキ 苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス
爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル
然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所 堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ 以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス
朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ 忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ 常ニ爾臣民ト共ニ在リ
若シ夫レ情ノ激スル所 濫ニ事端ヲ滋クシ 或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ亂リ 爲ニ大道ヲ誤リ 信義ヲ世界ニ失フカ如キハ 朕最モ之ヲ戒ム
宜シク擧國一家子孫相傳ヘ 確ク神州ノ不滅ヲ信シ 任重クシテ道遠キヲ念ヒ 總力ヲ將來ノ建設ニ傾ケ 道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ 誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ 世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ
爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ
【現代語訳】
私(昭和天皇)は、世界の情勢と日本が置かれている状況とを深く考えあわせて、緊急の手段をもってこの事態を収めようと思い、私の忠良なる国民に告げる。
私は、わが日本政府をもって、アメリカ、イギリス、中国、ソ連の4か国に対し、共同宣言(ポツダム宣言)を受け入れる旨を通告させた。
そもそも、わが国民が平穏に、安らかに暮らせるように心がけ、世界が共に栄えて、その喜びを共有することは、歴代天皇が手本として遺してきた教えであり、私も常にその考えを持ち続けてきた。
アメリカとイギリスに宣戦を布告した理由も、日本の自存と東アジアの安定を心から願ったためであり、他国の主権を排除したり、領土を侵略するようなことは、私の意志とはまったくもって異なる。
この戦争がはじまり、すでに4年が経過した。その間も陸海軍の将兵は勇敢に戦い、多くの役人たちは職務に励み、一億国民もそれぞれの職域で努力し、最善を尽くしたが、戦局は必ずしもわが方に好転したとは言えず、世界の情勢もまた日本にとって不利である。
それだけでなく、敵は新たに残虐な爆弾を(広島、長崎で)使用し、罪なき人々を殺傷し、その惨害が及ぶ範囲は測り知ることができない。
このような状況でなおも戦争を続ければ、わが日本民族の滅亡を招くだけでなく、ひいては人類の文明をも破壊してしまうだろう。
そのようなことになれば、私はどうして我が子に等しい国民を守り、歴代天皇の御霊に謝ることができようか。
これこそが、私がポツダム宣言を受諾するようにした理由である。
ポツダム宣言の受諾に至って、私は、日本とともにアジア解放に協力した友好諸国に対して遺憾の意を表明しないわけにはいかない。
日本国民も、戦死したり、職場で殉職したり、不幸な運命で亡くなった人、またその遺族のことを考えると、悲しみで身も心も引き裂かれる思いだ。
戦争で負傷し、空襲などの戦災に見まわれて、家や仕事を失った人たちの生活を考えると、とても心配で胸を痛めている。
これから日本が受けるであろう苦難は、筆舌に尽くしがたいものであろう。国民みなの気持ちも、私はよくわかっている。
けれども私は、時の運命に導かれるまま、耐え難いことにも耐え、我慢ならないことにも我慢して、人類の未来のために平和の実現を計りたい。
私は、ここに国体を護ることができ、忠良なる国民の真心を信頼しつつ、常に国民と一緒にいる。
もし感情のままに、みだりに争いごとや問題を起こしたり、仲間同士で互いを陥れたり、時局を混乱させたりして、人が行うべき道を誤り、世界から信用を失うようなことになれば、それは私が最も戒めたいことだ。
全国民が家族のように一致団結し、この国を子孫に伝え、神国(日本)の不滅を固く信じて、国家の再建と繁栄の任務は重く、その道のりが遠いことを心に留め、持てる総ての力を将来の建設に注ぎ、道義心を大切にし、志を固く守って誓い、わが国の真価を発揮して、世界の発展に遅れをとらないよう努力しなければならない。
国民には、これが私の意志だと、よく理解して行動してほしい。
中西輝政京都大学名誉教授は、「昭和天皇はラジオの玉音放送で戦争の終わりを国民に告げられた。それと同時に、この大戦での戦死者や戦争犠牲者のことを忘れず、これからの尋常ならざる苦難の時代にも、いままで同様に常に国民と共にある」、と同時に「日本の国の連続性をも国民に訴えられたのである」と言う。
そして、「国家としての日本の連続性を示す証は他になく、それによって日本人は心を一つにして祖国の再建の道に邁進しようと立ち上がったのであった。当時を生きた圧倒的多数の日本人は、まさにこの言葉で一つになったのではなかったか。つまり、『8月15日』は日本という国の断絶ではなく、その深い連続性を国民に教えている日なのであり、その連続性の象徴として戦没者を祀っているのが靖國神社なのである」とも語っている。戦前と戦後を通じる『日本人の心』の連続性の証として、靖国神社が存在する」と言うのだ。誠にその通りだと思うのである。
今日8月15日は、多くの日本国民が靖国神社に参拝したのではなかろうか。
かく言う私も本日は行くことが出来なかったが、8月14日にお参りをし、昇殿参拝もさせていただいた。
中西名誉教授の言葉を借りるならば「戦没者、軍人を慰霊し、その精神や物語を代々継承していくことは、どの国も行っていることである。そして、その慰霊と顕彰は、その国の伝統的な文化や習俗、宗教的な慣習に則ったかたちで行われなければ意味のある慰霊、顕彰にはならない」。
また、反日マスコミはこぞって、閣僚、政治家の靖国参拝を報じ、中国や韓国にお伺いを立て、その意向を報道する。しかし、中国や韓国などに非難されるいわれもない。内政干渉も甚だしい。いったいいつまで我々は戦後を引きずらなければならないのか。
そう思った本日であった。
そして、今年も「靖國神社昇殿参拝、遊就館見学」イベントを8月26日(土)に開催する。
https://tamagawa-miraijuku.com/event.html
英霊に対し感謝の誠を捧げ、参加者一同、本殿にて昇殿参拝をさせていただき、「ありがとうございます」とお伝えする。また、靖國神社職員による講演「次代へ繋ぐ英霊の思い」で、講師の経験の上にある深い話に心を寄せ、より一層、英霊への感謝を深めていただきたいと思う。そして、今更ながらではあるが、今一度、今日命あるありがたみを感じていきたいと思う。
「忘れてはならない4つの日」とは。
一つは6月23日「沖縄慰霊の日」、二つは8月6日の「広島原爆の日」三つは8月9日「長崎原爆の日」、そして、8月15日の「終戦の日」であり、上皇陛下はこの4つを「忘れてはならない日」として挙げている。
78年前のこの日、正午に昭和天皇による「終戦の詔書」は、ラジオで玉音放送が流れた。
その全文を以下に記したい。
【原文】
朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現狀トニ鑑ミ 非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ 茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク
朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ 其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ
抑ゝ帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ 萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ 皇祖皇宗ノ遺範ニシテ
朕ノ拳々措カサル所
曩ニ米英二國ニ宣戰セル所以モ亦 實ニ帝國ノ自存ト 東亞ノ安定トヲ庻幾スルニ出テ 他國ノ主權ヲ排シ 領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ 朕カ志ニアラス
然ルニ交戰已ニ四歳ヲ閲シ 朕カ陸海將兵ノ勇戰 朕カ百僚有司ノ勵精 朕カ一億衆庻ノ奉公 各ゝ最善ヲ盡セルニ拘ラス 戰局必スシモ好轉セス
世界ノ大勢亦我ニ利アラス
加之敵ハ新ニ殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ 頻ニ無辜ヲ殺傷シ 慘害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル
而モ尚交戰ヲ繼續セムカ 終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス 延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ
斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ 皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ
是レ朕カ帝國政府ヲシテ 共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ
朕ハ帝國ト共ニ 終始東亞ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ對シ 遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス
帝國臣民ニシテ戰陣ニ死シ 職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及 其ノ遺族ニ想ヲ致セハ 五内爲ニ裂ク
且戰傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ 家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ 朕ノ深ク軫念スル所ナリ
惟フニ今後帝國ノ受クヘキ 苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス
爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル
然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所 堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ 以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス
朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ 忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ 常ニ爾臣民ト共ニ在リ
若シ夫レ情ノ激スル所 濫ニ事端ヲ滋クシ 或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ亂リ 爲ニ大道ヲ誤リ 信義ヲ世界ニ失フカ如キハ 朕最モ之ヲ戒ム
宜シク擧國一家子孫相傳ヘ 確ク神州ノ不滅ヲ信シ 任重クシテ道遠キヲ念ヒ 總力ヲ將來ノ建設ニ傾ケ 道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ 誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ 世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ
爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ
【現代語訳】
私(昭和天皇)は、世界の情勢と日本が置かれている状況とを深く考えあわせて、緊急の手段をもってこの事態を収めようと思い、私の忠良なる国民に告げる。
私は、わが日本政府をもって、アメリカ、イギリス、中国、ソ連の4か国に対し、共同宣言(ポツダム宣言)を受け入れる旨を通告させた。
そもそも、わが国民が平穏に、安らかに暮らせるように心がけ、世界が共に栄えて、その喜びを共有することは、歴代天皇が手本として遺してきた教えであり、私も常にその考えを持ち続けてきた。
アメリカとイギリスに宣戦を布告した理由も、日本の自存と東アジアの安定を心から願ったためであり、他国の主権を排除したり、領土を侵略するようなことは、私の意志とはまったくもって異なる。
この戦争がはじまり、すでに4年が経過した。その間も陸海軍の将兵は勇敢に戦い、多くの役人たちは職務に励み、一億国民もそれぞれの職域で努力し、最善を尽くしたが、戦局は必ずしもわが方に好転したとは言えず、世界の情勢もまた日本にとって不利である。
それだけでなく、敵は新たに残虐な爆弾を(広島、長崎で)使用し、罪なき人々を殺傷し、その惨害が及ぶ範囲は測り知ることができない。
このような状況でなおも戦争を続ければ、わが日本民族の滅亡を招くだけでなく、ひいては人類の文明をも破壊してしまうだろう。
そのようなことになれば、私はどうして我が子に等しい国民を守り、歴代天皇の御霊に謝ることができようか。
これこそが、私がポツダム宣言を受諾するようにした理由である。
ポツダム宣言の受諾に至って、私は、日本とともにアジア解放に協力した友好諸国に対して遺憾の意を表明しないわけにはいかない。
日本国民も、戦死したり、職場で殉職したり、不幸な運命で亡くなった人、またその遺族のことを考えると、悲しみで身も心も引き裂かれる思いだ。
戦争で負傷し、空襲などの戦災に見まわれて、家や仕事を失った人たちの生活を考えると、とても心配で胸を痛めている。
これから日本が受けるであろう苦難は、筆舌に尽くしがたいものであろう。国民みなの気持ちも、私はよくわかっている。
けれども私は、時の運命に導かれるまま、耐え難いことにも耐え、我慢ならないことにも我慢して、人類の未来のために平和の実現を計りたい。
私は、ここに国体を護ることができ、忠良なる国民の真心を信頼しつつ、常に国民と一緒にいる。
もし感情のままに、みだりに争いごとや問題を起こしたり、仲間同士で互いを陥れたり、時局を混乱させたりして、人が行うべき道を誤り、世界から信用を失うようなことになれば、それは私が最も戒めたいことだ。
全国民が家族のように一致団結し、この国を子孫に伝え、神国(日本)の不滅を固く信じて、国家の再建と繁栄の任務は重く、その道のりが遠いことを心に留め、持てる総ての力を将来の建設に注ぎ、道義心を大切にし、志を固く守って誓い、わが国の真価を発揮して、世界の発展に遅れをとらないよう努力しなければならない。
国民には、これが私の意志だと、よく理解して行動してほしい。
中西輝政京都大学名誉教授は、「昭和天皇はラジオの玉音放送で戦争の終わりを国民に告げられた。それと同時に、この大戦での戦死者や戦争犠牲者のことを忘れず、これからの尋常ならざる苦難の時代にも、いままで同様に常に国民と共にある」、と同時に「日本の国の連続性をも国民に訴えられたのである」と言う。
そして、「国家としての日本の連続性を示す証は他になく、それによって日本人は心を一つにして祖国の再建の道に邁進しようと立ち上がったのであった。当時を生きた圧倒的多数の日本人は、まさにこの言葉で一つになったのではなかったか。つまり、『8月15日』は日本という国の断絶ではなく、その深い連続性を国民に教えている日なのであり、その連続性の象徴として戦没者を祀っているのが靖國神社なのである」とも語っている。戦前と戦後を通じる『日本人の心』の連続性の証として、靖国神社が存在する」と言うのだ。誠にその通りだと思うのである。
今日8月15日は、多くの日本国民が靖国神社に参拝したのではなかろうか。
かく言う私も本日は行くことが出来なかったが、8月14日にお参りをし、昇殿参拝もさせていただいた。
中西名誉教授の言葉を借りるならば「戦没者、軍人を慰霊し、その精神や物語を代々継承していくことは、どの国も行っていることである。そして、その慰霊と顕彰は、その国の伝統的な文化や習俗、宗教的な慣習に則ったかたちで行われなければ意味のある慰霊、顕彰にはならない」。
また、反日マスコミはこぞって、閣僚、政治家の靖国参拝を報じ、中国や韓国にお伺いを立て、その意向を報道する。しかし、中国や韓国などに非難されるいわれもない。内政干渉も甚だしい。いったいいつまで我々は戦後を引きずらなければならないのか。
そう思った本日であった。
そして、今年も「靖國神社昇殿参拝、遊就館見学」イベントを8月26日(土)に開催する。
https://tamagawa-miraijuku.com/event.html
英霊に対し感謝の誠を捧げ、参加者一同、本殿にて昇殿参拝をさせていただき、「ありがとうございます」とお伝えする。また、靖國神社職員による講演「次代へ繋ぐ英霊の思い」で、講師の経験の上にある深い話に心を寄せ、より一層、英霊への感謝を深めていただきたいと思う。そして、今更ながらではあるが、今一度、今日命あるありがたみを感じていきたいと思う。
共産主義の歴史戦に乗じてはならぬ
2023.08.03
昨年の7月31日、「欧米で広がる戦勝国史観の見直し」講演会&トークライブというイベントを主宰した。
1995年、アメリカ政府が政府の機密文書「ヴェノナ文書」を公開したことで、第二次世界大戦の背景に、ソ連コミンテルンによる謀略の側面もあったことが明らかになり、その後も、ソ連による秘密工作の実態を記したソ連の内部文書「ミトロヒン文書」、日本外務省による「米国共産党調書」などが公になったことで、「正義の連合国」対「邪悪な全体主義国」という従来の戦勝国史観を見直す動きが生まれており、近現代史がアップデートされている現実が現在進行形で進んでいる。
このような事実を受け、アメリカ、イギリス、そして日本の機密文書の実態と、その機密文書の公開によって、いわゆる戦勝国史観が欧米でどのように見直されているのか、最新の情勢について報告してもらおうと、評論家の江崎道朗先生と麗澤大学のジェイソン・モーガン准教授にご登壇いただき、欧米で広がっている戦勝国史観の見直しの現状と、現在進行形で行われている共産主義の脅威についてお話をいただいた。
そのイベントの中で「『共産主義という思想の存在に危機感を持って注視すること』が大切であり、日本のメディアに頼るのではなく、日々、国際政治に目を向け、世界の流れを注視することが重要である。そして、視野の狭さは国益を損なう」という先生方の言葉が、今の世の中の流れを客観的に見た時に、その共産主義の手中にのってしまった保守もいるのではないかと感じるのと同時に、自分自身の在り方が問われる時代になったと実感する。
先日、台湾との外交関係を維持する中米グアテマラのアレハンドロ・ジャマテイ大統領が、首都グアテマラ市の大統領府で読売新聞の単独インタビューに応じたとして、ジャマテイ氏は2020年の就任以来、中国から「台湾との断交」を条件に巨額のインフラ投資など様々な申し出を受けたが、いずれも拒否したことを明かした。「我々は友人(台湾)を売り渡す習慣はない」と述べ、台湾との外交関係を維持する姿勢を強調したとの報道があった。
台湾と外交関係を結ぶ13か国のうち、中南米・カリブ地域には7か国が集中し、中でもグアテマラは最大の人口や経済規模を誇る国だ。
しかし、同地域では近年、台湾と断交し、中国と国交を樹立する「断交ドミノ」が進んでおり、2017年以降、ホンジュラスなど5か国が相次いで中国にくら替えし、ジャマテイ氏は「中国は特に経済的な問題を抱えた国々を買い取っている」と指摘している。そして、「身売りするならこれ以上の買い手はない、と思わせるような申し出をたくさん受けてきた」と証言している。
昨年、江崎道朗先生、ジェイソン・モーガン先生が話され、現在進行形で動いている共産主義の脅威は、上記の中国、そして、ウクライナ侵攻をしているロシアなどに象徴されているのと同時に、日本のマスコミにも浸透しているのではないかと思うほどである。
岸田政権の経済政策などネガティブな政策が多分に行われる現実に自分も憤りを感じるが、安全保障政策などは、安倍政権でも成し得なかったことをひとつひとつ実行している現実もある。しかし、マスコミ報道はネガティブな報道ばかりが目立ち、良い成果をもたらしている情報は大きく取り上げられない。そして、ネガティブな報道は反岸田を煽り、打倒岸田政権へと国民感情を動かす。さらには、保守を分断させるような報道も見受けられる。
しかし、ちょっと待って欲しい。その情報に煽られた国民はどうするつもりなのか。自民党に反対票を投じ、野党に政権を譲り渡しても良いと思っているのか。日本維新の会に力はあるのか。国民民主党が良いのか。参政党で良いのか。それぞれ魅力がある政党かもしれない。しかし、客観的に見た時に今の日本を救えるだけの力があるのかは、私は疑問である。民主党政権時のような二の舞はまっぴらごめんだ。
と、このように、昨日まで思っていたが、仙台市議会議員選挙の結果を見て、和田政宗参議院議員が以下のような選挙結果を、8月3日のFacebookでアップしていた。
仙台市議選の開票結果を計算した。
前回に比べ得票数は、
自民 -23800
立民 -10300
共産 -10300
国民 -4900
公明 -1100
維新 +21300
参政 +11200
れいわ +3000
(いずれも前回候補者無)
※2桁以下は切り捨てて表記
※投票率下落で有効投票数-1万票
自民党は大きく得票を減らし深刻な状況。
この数字からも、前回は自民党に投票し今回は投票しなかった方々が、維新、参政へ投票したか、投票に行かなかったと分析できる。
この分析は大きく外れてはいないであろう。
今まで自民党を応援していた本来の支持者をも、自民党から距離を置くようになったのと同時に、従来の自民党支持者をも敵に回ってしまっている現実を、元に戻すといった信頼回復には、起死回生の政策がなければ、相当な時間が必要なのではないかと思う。
その自民党も一枚岩ではない。
そもそも自民党は、1955年11月15日に吉田茂党首が率いる「自由党」と、鳩山一郎が率いる「日本民主党」が合同し、自由民主党が結成されたこと。これに先立って社会党再統一が行われていたことから保守政党と革新政党のそれぞれに大政党が誕生することとなり、55年体制が成立した。そして、憲法改正を最も意欲的に実行しようとしていたのは「日本民主党」であって、宏池会の前身である「吉田学校」の親である吉田茂率いる「自由党」ではない。こうしたことからも分かるように、自民党は雑多な思想が混在した政党であって、従来あるべき、保守政党ではないと私は考えている。
しかし、LGBT法案成立の際に反対した議員がいたことでも分かるように、亡くなられた安倍晋三元首相のように、保守議員は多数存在するし、そうした保守議員を応援することを何故しないのであろうかとつくづく思うのである。マスコミのネガティブキャンペーンにズッポリと埋まってしまい、反自民党へと動く保守派に私は残念だと思う気持ちしかない。
そんな中、自民党女性局フランス研修の旅行と疑われても仕方がない写メをFacebookにアップするなど、安倍晋三元首相が亡くなってから、タガが外れたかのように色々な問題が噴き出てくるが、このように、身内から矢を引くような行動をする議員には、どうしたものかと思わざるを得ない。
それでも、私は、反日マスコミや左翼・リベラルの、民意にすり寄り、引き剥がそうとする歴史戦が展開されているという現実を忘れてはならないと思っている。そして、グアテマラのアレハンドロ・ジャマテイ大統領のように、国益のためには何が必要であるのか。共産主義の甘い誘いに乗ることなく、現実を注視しつつ、客観的に見れる視野を常に持ち続けたいと思う昨今なのである。
1995年、アメリカ政府が政府の機密文書「ヴェノナ文書」を公開したことで、第二次世界大戦の背景に、ソ連コミンテルンによる謀略の側面もあったことが明らかになり、その後も、ソ連による秘密工作の実態を記したソ連の内部文書「ミトロヒン文書」、日本外務省による「米国共産党調書」などが公になったことで、「正義の連合国」対「邪悪な全体主義国」という従来の戦勝国史観を見直す動きが生まれており、近現代史がアップデートされている現実が現在進行形で進んでいる。
このような事実を受け、アメリカ、イギリス、そして日本の機密文書の実態と、その機密文書の公開によって、いわゆる戦勝国史観が欧米でどのように見直されているのか、最新の情勢について報告してもらおうと、評論家の江崎道朗先生と麗澤大学のジェイソン・モーガン准教授にご登壇いただき、欧米で広がっている戦勝国史観の見直しの現状と、現在進行形で行われている共産主義の脅威についてお話をいただいた。
そのイベントの中で「『共産主義という思想の存在に危機感を持って注視すること』が大切であり、日本のメディアに頼るのではなく、日々、国際政治に目を向け、世界の流れを注視することが重要である。そして、視野の狭さは国益を損なう」という先生方の言葉が、今の世の中の流れを客観的に見た時に、その共産主義の手中にのってしまった保守もいるのではないかと感じるのと同時に、自分自身の在り方が問われる時代になったと実感する。
先日、台湾との外交関係を維持する中米グアテマラのアレハンドロ・ジャマテイ大統領が、首都グアテマラ市の大統領府で読売新聞の単独インタビューに応じたとして、ジャマテイ氏は2020年の就任以来、中国から「台湾との断交」を条件に巨額のインフラ投資など様々な申し出を受けたが、いずれも拒否したことを明かした。「我々は友人(台湾)を売り渡す習慣はない」と述べ、台湾との外交関係を維持する姿勢を強調したとの報道があった。
台湾と外交関係を結ぶ13か国のうち、中南米・カリブ地域には7か国が集中し、中でもグアテマラは最大の人口や経済規模を誇る国だ。
しかし、同地域では近年、台湾と断交し、中国と国交を樹立する「断交ドミノ」が進んでおり、2017年以降、ホンジュラスなど5か国が相次いで中国にくら替えし、ジャマテイ氏は「中国は特に経済的な問題を抱えた国々を買い取っている」と指摘している。そして、「身売りするならこれ以上の買い手はない、と思わせるような申し出をたくさん受けてきた」と証言している。
昨年、江崎道朗先生、ジェイソン・モーガン先生が話され、現在進行形で動いている共産主義の脅威は、上記の中国、そして、ウクライナ侵攻をしているロシアなどに象徴されているのと同時に、日本のマスコミにも浸透しているのではないかと思うほどである。
岸田政権の経済政策などネガティブな政策が多分に行われる現実に自分も憤りを感じるが、安全保障政策などは、安倍政権でも成し得なかったことをひとつひとつ実行している現実もある。しかし、マスコミ報道はネガティブな報道ばかりが目立ち、良い成果をもたらしている情報は大きく取り上げられない。そして、ネガティブな報道は反岸田を煽り、打倒岸田政権へと国民感情を動かす。さらには、保守を分断させるような報道も見受けられる。
しかし、ちょっと待って欲しい。その情報に煽られた国民はどうするつもりなのか。自民党に反対票を投じ、野党に政権を譲り渡しても良いと思っているのか。日本維新の会に力はあるのか。国民民主党が良いのか。参政党で良いのか。それぞれ魅力がある政党かもしれない。しかし、客観的に見た時に今の日本を救えるだけの力があるのかは、私は疑問である。民主党政権時のような二の舞はまっぴらごめんだ。
と、このように、昨日まで思っていたが、仙台市議会議員選挙の結果を見て、和田政宗参議院議員が以下のような選挙結果を、8月3日のFacebookでアップしていた。
仙台市議選の開票結果を計算した。
前回に比べ得票数は、
自民 -23800
立民 -10300
共産 -10300
国民 -4900
公明 -1100
維新 +21300
参政 +11200
れいわ +3000
(いずれも前回候補者無)
※2桁以下は切り捨てて表記
※投票率下落で有効投票数-1万票
自民党は大きく得票を減らし深刻な状況。
この数字からも、前回は自民党に投票し今回は投票しなかった方々が、維新、参政へ投票したか、投票に行かなかったと分析できる。
この分析は大きく外れてはいないであろう。
今まで自民党を応援していた本来の支持者をも、自民党から距離を置くようになったのと同時に、従来の自民党支持者をも敵に回ってしまっている現実を、元に戻すといった信頼回復には、起死回生の政策がなければ、相当な時間が必要なのではないかと思う。
その自民党も一枚岩ではない。
そもそも自民党は、1955年11月15日に吉田茂党首が率いる「自由党」と、鳩山一郎が率いる「日本民主党」が合同し、自由民主党が結成されたこと。これに先立って社会党再統一が行われていたことから保守政党と革新政党のそれぞれに大政党が誕生することとなり、55年体制が成立した。そして、憲法改正を最も意欲的に実行しようとしていたのは「日本民主党」であって、宏池会の前身である「吉田学校」の親である吉田茂率いる「自由党」ではない。こうしたことからも分かるように、自民党は雑多な思想が混在した政党であって、従来あるべき、保守政党ではないと私は考えている。
しかし、LGBT法案成立の際に反対した議員がいたことでも分かるように、亡くなられた安倍晋三元首相のように、保守議員は多数存在するし、そうした保守議員を応援することを何故しないのであろうかとつくづく思うのである。マスコミのネガティブキャンペーンにズッポリと埋まってしまい、反自民党へと動く保守派に私は残念だと思う気持ちしかない。
そんな中、自民党女性局フランス研修の旅行と疑われても仕方がない写メをFacebookにアップするなど、安倍晋三元首相が亡くなってから、タガが外れたかのように色々な問題が噴き出てくるが、このように、身内から矢を引くような行動をする議員には、どうしたものかと思わざるを得ない。
それでも、私は、反日マスコミや左翼・リベラルの、民意にすり寄り、引き剥がそうとする歴史戦が展開されているという現実を忘れてはならないと思っている。そして、グアテマラのアレハンドロ・ジャマテイ大統領のように、国益のためには何が必要であるのか。共産主義の甘い誘いに乗ることなく、現実を注視しつつ、客観的に見れる視野を常に持ち続けたいと思う昨今なのである。
スペシャリストとジェネラリスト
2023.07.30
映画「アポロ13号」をご存知であろうか。
1995年劇場公開された月面探査船アポロ13号爆発事故の実話を基に、絶体絶命の危機に陥った乗組員たちの救出劇をスリリングに描いた人間ドラマである。主演は船長のジェームス・ラベルを演じるトム・ハンクスであるが、この映画のもう一人の主人公が、当時、NASAの主席飛行管制官をつとめていたジーン・クランツ。エド・ハリス演じるこのリーダー、ジーン・クランツは、このアポロ13号の絶命の危機を救う。
この事故は、月に向かって飛ぶアポロ13号が、突然、酸素タンクの爆発事故を起こし、深刻な電力不足と水不足という絶望的な状況に陥ったもの。
この前代未聞の事故に遭遇し、NASAの全米でも選り抜かれたスペシャリスト集団たちは途方に暮れる状況。しかし、この専門家達の誰もが、前代未聞の事故の前で解決策が見つからず、途方に暮れる状況の中で、ジーン・クランツは強いリーダーシップを発揮し、「我々のミッションは、この3人の乗組員たちを生きて還らすことだ!」と言って、次々に発生する難問に対して専門家達の知恵を総動員し、解決策を見つけ、次々と問題を解決していく。この一人のリーダーの見事な姿は、自身のミッションを明確に定め、そのミッションの完遂まで決して諦めない姿を示してくれた。
もう一つ、別な話をしたい。
米国にノーベル経済学賞を受賞したケネス・アロー、ノーベル物理学賞のマレー・ゲルマン、同じく物理学賞のフィリップ・アンダーソンが設立した「サンタフェ研究所」という研究所がある。この研究所で働く研究者は、物理学、化学、生物学、医学、脳科学、心理学、社会心理学、人類学、文化人類学、社会学、経済学、政治学、歴史学、情報科学など、ほとんどすべての研究分野から研究者達が集まっていた。そして、この研究所は「学際的アプローチ」や「総合的アプローチ」に果敢に挑戦するスタイルを採っていて、例えば、経済学者と物理学者といった全く違った分野の専門家が一緒のテーブルに着き、専門用語の壁を超え、「複雑系」といったテーマについて、自由かつ率直に議論するといった文化を持つ。
この研究所の創設者でもある元所長のジョージ・コーワン博士は、サンタフェ研究所の将来に対し、今後、どの分野の専門家(スペシャリスト)を必要としているのか、の問いに対し、以下のように答えたという。
「この研究所には専門家(スペシャリスト)は、もう十分にいる。我々が本当に必要としているのは、それら様々な分野を、研究を『統合』する『スーパージェネラリストだ』」と。
個別の分野の「専門に知性」だけでは解決できない「学際的問題」を解決するために、個別の「専門の知性」を、その「垣根」を超えて統合する「統合の知性」が必要であり、コーワン博士が「スーパージェネラリスト」と呼んだのは、そうした「統合の知性」を持った人材のことで、それは、様々な専門分野を、その境界を超えて水平に統合する「水平統合の知性」を持った人材のことを云うのだそうだ。
多摩大学大学院名誉教授でシンクタンク・ソフィアバンク代表の田坂広志氏は「専門の知性」ではなく、「統合の知性」を持った人材、それも「水平統合の知性」ではなく「垂直統合の知性」を持った人材が必要であると言う。そして、映画「アポロ13号」で描かれたジーン・クランツの姿は、我々に求められる「知性」の在り方を象徴的に示しているというのである。
・これまで誰も経験したことが無い、前代未聞の事故。
・絶望的な極限状況に置かれた、三人の乗組員の生命。
・専門家達も解決策を見出せない、想像を絶する難題。
こうした問題を前にして、NASAの専門家達を率い、その難題に粘り強く取り組み、最終的に、それを成功裏に解決した人物。容易に答えの見つからない問いに対して決して諦めず、その問いを問い続ける「知性」を持ったジーン・クランツは「垂直統合の思考」を持っていたという。すなわち、様々なレベルでの思考を切り替えながら並行して進め、それらを瞬時に統合することができるのだというのだ。
そして、その様々な思考とは、次の「7つのレベルの思考」を指す。
①明確な「ビジョン」
②基本的な「戦略」
③具体的な「戦術」
④個別の「技術」
⑤優れた「人間力」
⑥素晴らしい「志」
⑦深い「思想」
これら「7つのレベル思考」を切り替えながら並行して進め、それらを瞬時に統合することができ、「垂直統合」の思考を身に付けていたと言うのである。
では、この「7つのレベルの思考」を身に付けるにはどうしたら良いのか。
その答えは「自己限定を捨てる」こと。
我々は、無意識に自分の思考を自分が得意だと思っている「思考レベル」に限定しておこなう傾向があり、その「自己限定」のために、自分の中に眠る「可能性」を開花させることができないで終わってしまう。自分の限界を超えることにより、「7つのレベル思考」を身に付けることができるのである。
私は、習字教室を営み、書道家という肩書も持っていることにおいては、その分野ではスペシャリストではあるが、勉強会、イベントの主催などを開催する寺子屋「玉川未来塾」主宰者の立場では、スペシャリストを講師に依頼し、それを形にするといった意味では、ジェネラリストであるかと思う。
現代社会を見ていると、それぞれの分野でのスペシャリストはたくさんいるが、ジョーン・クランツのように、客観的な視野で物事を整理し、そして、総合して物事の解決に向かって尽力するといったジェネラリストの存在はスペシャリストに対してどの程度の割合でいるのか。むしろ、少ないのではないか。
ジェネラリストの視点をもって、物事に当たることが、複雑化した現代社会にはとても必要ではないのか。そして、自己の限界を超えることこそが、人間を成長させる早道なのではないか。さらには、そうすることによって、「スーパージェネラリスト」という「垂直統合」の思考を身に付けることができ、どんな困難にも立ち向かい、解決することができるのではないか。色々な問題が湧き起こる現代だからこそ、そう思って止まない昨今である。
1995年劇場公開された月面探査船アポロ13号爆発事故の実話を基に、絶体絶命の危機に陥った乗組員たちの救出劇をスリリングに描いた人間ドラマである。主演は船長のジェームス・ラベルを演じるトム・ハンクスであるが、この映画のもう一人の主人公が、当時、NASAの主席飛行管制官をつとめていたジーン・クランツ。エド・ハリス演じるこのリーダー、ジーン・クランツは、このアポロ13号の絶命の危機を救う。
この事故は、月に向かって飛ぶアポロ13号が、突然、酸素タンクの爆発事故を起こし、深刻な電力不足と水不足という絶望的な状況に陥ったもの。
この前代未聞の事故に遭遇し、NASAの全米でも選り抜かれたスペシャリスト集団たちは途方に暮れる状況。しかし、この専門家達の誰もが、前代未聞の事故の前で解決策が見つからず、途方に暮れる状況の中で、ジーン・クランツは強いリーダーシップを発揮し、「我々のミッションは、この3人の乗組員たちを生きて還らすことだ!」と言って、次々に発生する難問に対して専門家達の知恵を総動員し、解決策を見つけ、次々と問題を解決していく。この一人のリーダーの見事な姿は、自身のミッションを明確に定め、そのミッションの完遂まで決して諦めない姿を示してくれた。
もう一つ、別な話をしたい。
米国にノーベル経済学賞を受賞したケネス・アロー、ノーベル物理学賞のマレー・ゲルマン、同じく物理学賞のフィリップ・アンダーソンが設立した「サンタフェ研究所」という研究所がある。この研究所で働く研究者は、物理学、化学、生物学、医学、脳科学、心理学、社会心理学、人類学、文化人類学、社会学、経済学、政治学、歴史学、情報科学など、ほとんどすべての研究分野から研究者達が集まっていた。そして、この研究所は「学際的アプローチ」や「総合的アプローチ」に果敢に挑戦するスタイルを採っていて、例えば、経済学者と物理学者といった全く違った分野の専門家が一緒のテーブルに着き、専門用語の壁を超え、「複雑系」といったテーマについて、自由かつ率直に議論するといった文化を持つ。
この研究所の創設者でもある元所長のジョージ・コーワン博士は、サンタフェ研究所の将来に対し、今後、どの分野の専門家(スペシャリスト)を必要としているのか、の問いに対し、以下のように答えたという。
「この研究所には専門家(スペシャリスト)は、もう十分にいる。我々が本当に必要としているのは、それら様々な分野を、研究を『統合』する『スーパージェネラリストだ』」と。
個別の分野の「専門に知性」だけでは解決できない「学際的問題」を解決するために、個別の「専門の知性」を、その「垣根」を超えて統合する「統合の知性」が必要であり、コーワン博士が「スーパージェネラリスト」と呼んだのは、そうした「統合の知性」を持った人材のことで、それは、様々な専門分野を、その境界を超えて水平に統合する「水平統合の知性」を持った人材のことを云うのだそうだ。
多摩大学大学院名誉教授でシンクタンク・ソフィアバンク代表の田坂広志氏は「専門の知性」ではなく、「統合の知性」を持った人材、それも「水平統合の知性」ではなく「垂直統合の知性」を持った人材が必要であると言う。そして、映画「アポロ13号」で描かれたジーン・クランツの姿は、我々に求められる「知性」の在り方を象徴的に示しているというのである。
・これまで誰も経験したことが無い、前代未聞の事故。
・絶望的な極限状況に置かれた、三人の乗組員の生命。
・専門家達も解決策を見出せない、想像を絶する難題。
こうした問題を前にして、NASAの専門家達を率い、その難題に粘り強く取り組み、最終的に、それを成功裏に解決した人物。容易に答えの見つからない問いに対して決して諦めず、その問いを問い続ける「知性」を持ったジーン・クランツは「垂直統合の思考」を持っていたという。すなわち、様々なレベルでの思考を切り替えながら並行して進め、それらを瞬時に統合することができるのだというのだ。
そして、その様々な思考とは、次の「7つのレベルの思考」を指す。
①明確な「ビジョン」
②基本的な「戦略」
③具体的な「戦術」
④個別の「技術」
⑤優れた「人間力」
⑥素晴らしい「志」
⑦深い「思想」
これら「7つのレベル思考」を切り替えながら並行して進め、それらを瞬時に統合することができ、「垂直統合」の思考を身に付けていたと言うのである。
では、この「7つのレベルの思考」を身に付けるにはどうしたら良いのか。
その答えは「自己限定を捨てる」こと。
我々は、無意識に自分の思考を自分が得意だと思っている「思考レベル」に限定しておこなう傾向があり、その「自己限定」のために、自分の中に眠る「可能性」を開花させることができないで終わってしまう。自分の限界を超えることにより、「7つのレベル思考」を身に付けることができるのである。
私は、習字教室を営み、書道家という肩書も持っていることにおいては、その分野ではスペシャリストではあるが、勉強会、イベントの主催などを開催する寺子屋「玉川未来塾」主宰者の立場では、スペシャリストを講師に依頼し、それを形にするといった意味では、ジェネラリストであるかと思う。
現代社会を見ていると、それぞれの分野でのスペシャリストはたくさんいるが、ジョーン・クランツのように、客観的な視野で物事を整理し、そして、総合して物事の解決に向かって尽力するといったジェネラリストの存在はスペシャリストに対してどの程度の割合でいるのか。むしろ、少ないのではないか。
ジェネラリストの視点をもって、物事に当たることが、複雑化した現代社会にはとても必要ではないのか。そして、自己の限界を超えることこそが、人間を成長させる早道なのではないか。さらには、そうすることによって、「スーパージェネラリスト」という「垂直統合」の思考を身に付けることができ、どんな困難にも立ち向かい、解決することができるのではないか。色々な問題が湧き起こる現代だからこそ、そう思って止まない昨今である。
あの悲劇を繰り返さないためにも
2023.05.08
「日本がなぜあの戦争に突入したのか」
この疑問を解決するため、前回のブログで「開戦の詔書」を紹介した。その詔書で、日本は支那を侵略する意図が無かったことが分かる。また、東アジアの平和を乱しているのは当の支那人であり、そして、米英との戦争は避けたかったが、「日本の自存と自衛」にやむなく立ち上がったことが読み取れる。
このように、開戦の詔書の内容において確認すべきことは、大東亜戦争が、我が国の生存に対する重大な脅威を除去し、アジア永遠の平和を確立することを目的にした自衛のための戦争であると宣言されていることである。そして、戦後において、天皇陛下は、この開戦の詔書で示された自衛のための戦争との宣言を一切撤回されていない。このことを深く心に刻むべきである。しかし、このことだけでは、「日本がなぜあの戦争に突入したのか」の疑問の解決には足りない。
評論家の江崎道朗氏は「コミンテルンや社会主義、共産主義といった問題を避けては、その全体像を理解するのは困難なのだ」と言う。
1995年、アメリカ政府が政府の機密文書「ヴェノナ文書」を、そして旧ソ連が「リッツキドニー文書」を公開したことで、今まで隠されていた歴史の真実が明らかになり、その結果、大東亜戦争の背景に、「ソ連コミンテルンによる謀略の側面もあった」ことが明らかになった。その後も、ソ連による秘密工作の実態を記したソ連の内部文書「ミトロヒン文書」や、旧ソ連コミンテルンが米国共産党を操り日米対立を煽り、その恐るべき反日プロパガンダ工作の全貌を報じた極秘文書である、日本外務省による「米国共産党調書」などが公になり、近現代史の真実を知ることができるようになった。つまり、あの戦争とは、自存自衛の戦争であったことと同時に、「ソ連コミンテルンによる謀略の側面もあった」こと、そして、ルーズベルト政権にいたコミンテルンによるスパイ工作員によって導かれた戦争であったのであると位置づけられるのである。
しかも、この共産主義の脅威は今もなお、現在進行形であるということを心しなければならない。
トランプ前大統領はロシア革命から100年にあたる2017年11月7日、この日を「共産主義犠牲者の国民的記念日と定め、旧ソ連や北朝鮮などを念頭に「共産主義によって1億人以上が犠牲になったがその脅威はいまだに続いている」と批判した。
欧州議会も第二次世界大戦勃発80年にあたる2019年9月19日、「欧州の未来に向けた欧州の記憶の重要性に関する決議」を採択した。「第二次世界大戦を始めたのはナチス・ドイツとソ連であったにもかかわらず、そのソ連を『正義』の側に位置付けた『ニュルンベルク裁判』は間違いだとして事実上の戦勝国史観見直しを決議したのだ」と。
「ヴェノナ文書」の公開を契機に、米国の保守派の間に、第二次世界大戦の責任は、ルーズベルト民主党政権とその背後で日米戦争を仕掛けようとしていたコミンテルンにあるのではないか、との問題が浮上し、そして、今では、戦後秩序の根底にあった「戦勝国史観」が欧米を中心に見直されている。
しかし、日本では、このことが大々的に報道されないばかりか、「日本の軍国主義者が世界征服を目論み、大東亜戦争を引き起こした」とされる東京裁判史観を信じ込んでいる人々が、まだ多数存在する。
私は、この戦後矛盾を解消したく、昨年、私が主宰する「寺子屋『玉川未来塾』」において「欧米で広がる戦勝国史観の見直し」トークライブを開催したのだが、まだまだ力不足を感じて止まない。私自身は、引き続き大東亜戦争の真実をお伝えしたく、今回は「『大東亜戦争 失われた真実」トークライブ」を開催する。ご興味のある方は以下のURLに内容や申し込み方法など詳細を記載しているので、ぜひ、ご覧いただきたい。
https://tamagawa-miraijuku.com/event/050527.html
多くの人たちの、縛られた「東京裁判史観」からの脱却を、強く願うものである。また、このような悲劇を繰り返さないためにも、東京裁判史観から目覚め、そして、日本はインテリジェンスを充実、拡充させなければならないのであり、必要不可欠なのである。
この疑問を解決するため、前回のブログで「開戦の詔書」を紹介した。その詔書で、日本は支那を侵略する意図が無かったことが分かる。また、東アジアの平和を乱しているのは当の支那人であり、そして、米英との戦争は避けたかったが、「日本の自存と自衛」にやむなく立ち上がったことが読み取れる。
このように、開戦の詔書の内容において確認すべきことは、大東亜戦争が、我が国の生存に対する重大な脅威を除去し、アジア永遠の平和を確立することを目的にした自衛のための戦争であると宣言されていることである。そして、戦後において、天皇陛下は、この開戦の詔書で示された自衛のための戦争との宣言を一切撤回されていない。このことを深く心に刻むべきである。しかし、このことだけでは、「日本がなぜあの戦争に突入したのか」の疑問の解決には足りない。
評論家の江崎道朗氏は「コミンテルンや社会主義、共産主義といった問題を避けては、その全体像を理解するのは困難なのだ」と言う。
1995年、アメリカ政府が政府の機密文書「ヴェノナ文書」を、そして旧ソ連が「リッツキドニー文書」を公開したことで、今まで隠されていた歴史の真実が明らかになり、その結果、大東亜戦争の背景に、「ソ連コミンテルンによる謀略の側面もあった」ことが明らかになった。その後も、ソ連による秘密工作の実態を記したソ連の内部文書「ミトロヒン文書」や、旧ソ連コミンテルンが米国共産党を操り日米対立を煽り、その恐るべき反日プロパガンダ工作の全貌を報じた極秘文書である、日本外務省による「米国共産党調書」などが公になり、近現代史の真実を知ることができるようになった。つまり、あの戦争とは、自存自衛の戦争であったことと同時に、「ソ連コミンテルンによる謀略の側面もあった」こと、そして、ルーズベルト政権にいたコミンテルンによるスパイ工作員によって導かれた戦争であったのであると位置づけられるのである。
しかも、この共産主義の脅威は今もなお、現在進行形であるということを心しなければならない。
トランプ前大統領はロシア革命から100年にあたる2017年11月7日、この日を「共産主義犠牲者の国民的記念日と定め、旧ソ連や北朝鮮などを念頭に「共産主義によって1億人以上が犠牲になったがその脅威はいまだに続いている」と批判した。
欧州議会も第二次世界大戦勃発80年にあたる2019年9月19日、「欧州の未来に向けた欧州の記憶の重要性に関する決議」を採択した。「第二次世界大戦を始めたのはナチス・ドイツとソ連であったにもかかわらず、そのソ連を『正義』の側に位置付けた『ニュルンベルク裁判』は間違いだとして事実上の戦勝国史観見直しを決議したのだ」と。
「ヴェノナ文書」の公開を契機に、米国の保守派の間に、第二次世界大戦の責任は、ルーズベルト民主党政権とその背後で日米戦争を仕掛けようとしていたコミンテルンにあるのではないか、との問題が浮上し、そして、今では、戦後秩序の根底にあった「戦勝国史観」が欧米を中心に見直されている。
しかし、日本では、このことが大々的に報道されないばかりか、「日本の軍国主義者が世界征服を目論み、大東亜戦争を引き起こした」とされる東京裁判史観を信じ込んでいる人々が、まだ多数存在する。
私は、この戦後矛盾を解消したく、昨年、私が主宰する「寺子屋『玉川未来塾』」において「欧米で広がる戦勝国史観の見直し」トークライブを開催したのだが、まだまだ力不足を感じて止まない。私自身は、引き続き大東亜戦争の真実をお伝えしたく、今回は「『大東亜戦争 失われた真実」トークライブ」を開催する。ご興味のある方は以下のURLに内容や申し込み方法など詳細を記載しているので、ぜひ、ご覧いただきたい。
https://tamagawa-miraijuku.com/event/050527.html
多くの人たちの、縛られた「東京裁判史観」からの脱却を、強く願うものである。また、このような悲劇を繰り返さないためにも、東京裁判史観から目覚め、そして、日本はインテリジェンスを充実、拡充させなければならないのであり、必要不可欠なのである。
歴史戦に勝つために~米国訪問の経験から
2023.04.06
月刊正論5月号の「南京事件 周到な反転攻勢を」と題した阿羅健一氏(近現代史研究家)と西岡力氏(モラロジー道徳教育財団道徳科学研究所教授)、そして江崎道朗氏(評論家)の鼎談は実に読みごたえがあった。
昨年の12月、阿羅氏の南京事件に関する活動に対し、産経新聞では「昭和12(1937)年12月の南京攻略戦に参加した元兵士らへの取材を通じ、当時の南京の実像に迫ってきた近現代史研究家の阿羅健一氏(78)が、旧日本軍の南京入城から85年に当たる13日、「南京事件はなかった 目覚めよ外務省!」(展転社)を発刊した。阿羅氏は、外務省がホームページ(HP)に掲載している「南京事件」に関する記述に根拠となる資料が同省に存在しないことを突き止め、「根拠がないならば、HPの記述を撤回すべきだ」と訴えている。85年前当時、中華民国の首都だった南京をめぐっては、旧日本軍が攻略、占領後の6週間で、市民ら30万人以上を虐殺したなどと中国は主張している。阿羅氏は当時の南京にいた高級将校や下士官、記者、画家、写真家ら300人以上への聞き取り調査や国内外の歴史資料の検証などを通じ、一般市民の虐殺はなかったと判断している。一方、外務省は「南京事件」についてHP上で「日本政府としては、日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています」と説明する。ただ、阿羅氏が昨年3月、外務省に「根拠となった資料」の公開を求めたところ、今年1月になって「該当文書を確認できなかったため、不開示(不存在)とした」との通知があった」と報道している。
江崎氏も月刊正論5月号で指摘しているが、外務省は根拠となる資料を持っていないことを明らかにしたことは、とても重要で、阿羅氏の最大の功績である。
ただ、歴史的事実を明らかにすることと、外交や国際政治のなかで、歴史認識問題が横たわっている土俵でどう勝つか、という議論は別であるとも話している。
私も本当にそうだと感じている。2014年に参加したリーダーシッププログラムで米国に行き、米国共和党系の有識者の話を聞いた際に、このままでは歴史戦に勝てないと痛感した。
その時の経験をもとに平成28(2016)年に「歴史戦に勝つために」との内容で論文を書いたことがある。7年前の論文ではあるが、私自身の手段方法は変わっても、思いは未だに変わらない。恥ずかしながら、以下の通り公開したい。ご笑覧いただけたら幸いである。
(以下)
2014年12月、「日本の将来を担う次世代リーダー達が米国大学主催の日米親善教育プログラムに参加し、現地有識者との意見交換することにより、『対話を通じた信頼関係』を築き、日米関係のさらなる発展を目指す」ことを目的とした「第8回ジョージタウン大学日米リーダーシッププログラム」に私は参加することができた。そのプログラムにはジョージタウン大学での日米関係論、国際関係論等の講義、議会見学及び議員、有識者との人材交流・意見交換、ヘリテージ財団訪問などが用意されていた。ブッシュ政権時代にホワイトハウス高官だったジョージタウン大学のマイケル・グリーン准教授、ビクター・チャ教授、ブラッドリー・ブレイクマン教授、さらにはカール・ローブ元次席補佐官、大統領政策・戦略担当上級顧問、そしてケビン・ドーク教授を講師に迎え、安全保障、朝鮮半島問題、米大統領選、そしてリーダーシップについての講義を受けた。
2014年11月27日の産経ニュースに慰安婦問題の分析を進める米国人ジャーナリスト、マイケル・ヨン氏とその調査班と、産経新聞の取材により、慰安婦問題に関する調査結果部分の全容が確認されたと公開された。その「米国戦争情報局資料『心理作戦チーム報告書』によると、「慰安婦たちは将兵とスポーツやピクニックを楽しみ、当時としては高価な蓄音機を持ち、町に買い物に出ることができた。日本人兵士が結婚を申し込む例も多く、実際に結婚に至ったケースもあった。平均月収は兵士の数十倍に上り、彼女らは金を多く持っていた」という。また、その報告書には慰安婦のことを「sex slave」ではなく「comfort girl」と表記されおり、「慰安婦は売春婦(prostitute)であるに過ぎない」と結論付けている。当時、敵国であった米軍の公式文書が「慰安婦=性奴隷」を否定していたのだ。
私は、講師陣にこの内容を伝えるとともに慰安婦問題に対する見解を求めるため、以下の質問をした。
「戦争中、慰安婦『comfot girl』を連れてきたのは朝鮮人仲介業者であった。また、朝鮮人仲介業者による慰安所は存在し、そこでは『商行為』が確認されている。よって、『sex slave』ではなく、軍が強制的に女性を拉致し、連行した事実はないと考えるが、先生方のご意見を聞かせてください」と。すると、どの教授もこの報告書のことを理解していなかった。知日派で知られるマイケル・グリーン准教授は「マイケル・ヨンはブローカーでしょ?」と発言。さらに「目の前で実際に体験した泣いているお婆さんがいるじゃないの。この問題は今や人権問題となって論点が変わっている」と答えた。
また、2013年11月14日に慰安婦問題について「米国は日本に謝罪を促すべき」と論考する論文を東亜日報に発表した、ビクター・チャ教授は「あなたの言った内容を唱える者もいるが多数派ではない。歴史問題は歴史家に任せればよい」とし、「決して解決するものではない」と答えた。
ヘリテージ財団では「尖閣諸島をめぐる東アジアの安全保障」について有意義なディスカッションが繰り広げられたが、その中で、財団側は米国における韓国との人材交流が活発であるとの話に触れ、「何かあったとき、我々は韓国人が何を考えるかは分かるが、日本人がどう考えるかは分からない」と語った。日本人との人材交流も、日本からの寄付も極めて限定的だとし、日本人と米国人におけるコミュニケーションが公私共に不足していることが露骨に論じられた。さらに、米国では各大学における中国研究がすすんでおり、そこには中国より研究費として多額な寄付が投じられているとも語られた。
中韓の米国におけるロビー活動は増強の一途にある事実を感じ、また、米国知識人にさえ日本の立場が理解されていないと痛感。「今のままでは歴史戦に永遠に勝つことができない」ことを実感した。この経験を踏まえ、日本が世界において歴史戦に勝つために、何をしなければならないのか。未だに止まない歴史戦の現状認識と、これからの日本のあるべき姿、そして自分の見解を述べていきたい。
・世界に主戦場を移した「歴史戦」
2014年8月5日から2日間、朝日新聞はそれまでの慰安婦報道についての特集記事を掲載し、過去の吉田清治氏の証言をめぐる記事を取り消した。そして、9月11日には謝罪会見を開いたが、慰安婦問題は世界に対して未だ反日の材料として取り上げられている。
日韓基本条約の発効から50周年となった2015年12月28日、安倍晋三首相の指示を受けた岸田文雄外相が訪韓し、尹炳世(ユンピョンセ)外相と会談し、いわゆる従軍慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的に解決される」との認識で合意した。この問題について国際社会で非難、批判することを相互に控えると確認し、併せて元慰安婦を支援する事業のため韓国政府が財団を設立し、日本政府が予算十億円を一括拠出することでも一致した。しかし、合意内容は玉虫色で「互譲」ではなく、日本側は肝心な点で譲歩したといわざるを得ない。それは安倍首相が表明したお詫びのなかで、「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と「軍の関与」にわざわざ言及したことである。この「言葉」が海外で「あの安倍首相が軍の関与を認めた」との誤解を招き、海外に住む韓国人は日本人に対し、攻撃をますます強めている。
韓国の日本大使館前に設置された「慰安婦少女像」は未だに撤去されず、その慰安婦像は、米国のグレンデール市、デトロイト市、フラートン市ほか、オーストラリア、カナダで設置。さらにはドイツのフライブルク市に、欧州で初めてとなる「慰安婦少女像」の建立が予定されていたが、9月21日の産経新聞によると、フライブルグ市で計画していた慰安婦像の設置は、独側の拒否で実現不可能となったと発表したものの、その勢いはとどまるところを知らない。
また、慰安婦に関連する資料のユネスコ記憶遺産への登録を目指す韓国の民間団体は、日本や中国、オランダなど各国の市民団体と共同で、5月31日付で資料の登録申請をした。その申請は韓国に事務局を置く「国際連帯委員会」が中心となって進め、申請資料は計2744件に上り、音声記録を含む元慰安婦らの証言記録や写真、市民団体による調査資料などという。しかし、月刊正論2016年10月号に高橋史朗明星大学特別教授が寄稿した「やぱりヒドい世界記憶遺産の申請文書」によると、日本の「女たちの戦争と平和資料館」と「日本の戦争責任資料センター」が大きな役割を果たし、日本の資料が申請の中心になっていることを明らかにしている。
今回の申請は、慰安婦問題は今後蒸し返されることはないとした「日韓合意」の狙いが外れたことを意味する。むしろ、韓国一国のみならず、国際的な「対日包囲網」が築かれるほどに、慰安婦問題が悪化したと言える。
これに対し、日本政府は即座に反対しなければならないが、先の合意には、「両政府は、国連など国際社会でお互いに非難・批判することは控える」との内容が含まれているため、合意によって、日本は政府として反論する手足を自ら縛ったわけである。
南京事件についても間違った歴史認識が独り歩きをしている。昨年10月にユネスコ記憶遺産に中国の「南京大虐殺文書」が登録された問題で、中国が登録申請の際にユネスコに提出したのは、資料の一覧と、資料を保管する7カ所の公文書館名を記しただけの目録だったことがわかった。南京文書の目録に一覧として挙げられた資料は十数種類。「南京市民の羅瑾が死の危険を冒して保存した16枚の写真」や、「大虐殺」の様子を書き留めた唯一の中国人とされる程瑞芳の日記も含まれているという。これらの資料について中国側は一方的に「虐殺の証拠」と主張しているが、多くは日本人学者らの調査によって否定されており、中国側の資料のずさんさが改めて浮き彫りになったといえる。
世界において南京大虐殺の嘘が広く知らしめすその原動力となった故アイリス・チャン氏著『ザ・レイプ・オブ・南京』だが、その内容は嘘で塗り固められているとして1999年に発行された『「ザ・レイプ・オブ・南京」の研究-中国における「情報戦」の手口と戦略』(藤岡信勝・東中野修道共著、祥伝社)より微塵に反論されている。
―初めて30万人虐殺が日本で主張されるようになったのは本多勝一著『中国の旅』(1972年)からである。しかし、注記として記されているにしか過ぎなかった。30万人虐殺説が大手を振るって歩き始めるのは、1982年に出た洞富雄(ほら・とみお)著『決定版南京大虐殺』からと言えよう。この頃になると、南京戦に参戦した将兵のほとんどが、社会の第一線を退いていた。それを待っていたかのように、南京虐殺を主張する声が強まっていったのである。しかし、ここまではまだ国内問題という側面が強かった。
ところが、1997年末に、アメリカで『ザ・レイプ・オブ・南京』が、そしてまた、南京安全地帯国際委員会委員長であったジョン・ラーベの日記が出版されるに及んで、事態は一変した。南京虐殺は国際問題へと発展したのである。『ザ・レイプ・オブ・南京』は南京事件を題材にしながら、その狙いとしているのは、実は日本の文化と歴史の全面否定で、チャンは著書の中で「明治新政府が全市民の道徳規範として、武士道という武士の倫理を採用した」ことが、やがて日本軍に残虐行為を行わせることになった―と論じている。
多くの嘘を事実として記したこの『ザ・レイプ・オブ・南京』は世界で大ベストセラーになり、この著書の内容を木端微塵に反論している書籍が多数発行されているにも関わらず、それを無視するかの如く、日本の嘘が世界に広まっているのが現状である。
そもそも、1946年に結成されたユネスコだが、その前身は、国際連盟国際教育局(事務局長は児童中心主義の心理学を主導したジャン・ピアジェ)であり、その活動は新教育者連盟のメンバーによって運営されていた。こうした経緯から、ユネスコは、フランス共産党所属の心理学者アンリ・ワロンらが中心となって結成された。所謂左翼組織である。
現ユネスコの事務局長で、次期国連事務総長として最有力視されているイリナ・ボコバ氏は共産主義国家ブルガリアの出身で、モスクワ国際関係大学を卒業後、ブルガリア議会の議員を経て2009年にユネスコ事務局長に選出された。ユネスコの記憶遺産に中国が申請した「南京大虐殺文書」を登録する最終決定を下し、また、2015年9月に北京で行われた抗日戦争勝利70年記念行事にも出席している。しかも、このたびの慰安婦に関連する資料のユネスコ記憶遺産への登録を目指す韓国の民間団体は、日本や中国、オランダなど各国の市民団体と共同で、資料の登録申請をしたこの問題に対し、現イリナ・ボコバユネスコ事務局長が、「複数の国、団体を交えて申請した方がいい」と中国に助言したと、国連で「慰安婦は性奴隷ではない」と訴えた杉田水脈元衆議院議員が講演会などで明らかにしている。こうして、中国、韓国が主導する「歴史戦」は欧米諸国、ユネスコなど世界を巻き込み、日本を貶める戦略を着々と遂行しているのである。
・いわゆる「従軍慰安婦問題」
「従軍慰安婦」という言葉が本格的に使われ始めたのは、1973年に発行された、元毎日新聞記者で作家の千田夏光氏による『従軍慰安婦』という本からである。
従軍慰安婦という虚構をさらにおどろおどろしく惨状に描いた本が1983年に吉田清治という自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長が「私は奴隷狩りを行った」と書いた『私の戦争犯罪-朝鮮人強制連行』である。この「職業的話術師」の話を大いに持ち上げたのが朝日新聞で、韓国政府も国連人権委員会も吉田証言を引用して報告書を作り、日本非難の根拠とした。事実上、朝日新聞が吉田証言に信憑性と権威を与えたのだ。さらに、1991年8月11日付けの朝日新聞(大阪本社版)に「日中戦争や第二次大戦の際、『女子挺身隊』の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた『朝鮮人従軍慰安婦』のうち、1人がソウル市内に生存していたことが分かり、『韓国挺身隊問題対策協議会』(中略)が聞き取り作業を始めた」という記事が掲載された。筆者は植村隆記者(当時)である。この記事が大きなきっかけとなり、91年秋ごろから92年にかけて、朝日新聞を中心に国内メディアは集中的に慰安婦問題報道を展開し、各社そろっての一大キャンペーンとなった。
これに対し、戦前戦中の事情を知っている人たちが、朝日新聞が宣伝する吉田清治的な「慰安婦強制連行」は事実無根であり、戦後生まれの人たちは騙されているのだ-と強い違和感を持って、元日本軍人、慰安婦たちの性病検査をした軍医の家族らなど、慣れない原稿を書いて、雑誌「正論」編集部に持ち込んできたほか、故中村粲獨協大学名誉教授が主宰するシンクタンク「昭和史研究所」が「昭和史研究所会報」にその内容を掲載し、そして、その一部を月刊正論2014年12月号に掲載した。いずれも慰安婦の強制連行はなかったとするものである。しかし、この事実は世界どころか日本国内にこの情報が浸透するまでには至っていない。
・「南京大虐殺」の嘘
「国民党極秘文書」である『中央宣伝部国際宣伝処工作概要』が戦後、発掘された。その特徴は①同時代の記録②個人的な回想とか日記などとは違って中国国民党中央宣伝部の公式記録③外部には見せてはならない一部の関係者だけが知り得た最高機密である。
この極秘文書とは別に「宣伝工作概要」という小冊子の中に次の言葉が出てくる。
「宣伝戦で敵を包囲して、最後に勝利を勝ち取る」
これが、中央宣伝部が目指した課題であり、その実現のため中央宣伝部は全力投入していった。その内容は「撮影した宣伝用写真を常に送って、国内外の大新聞、雑誌、グラビア版に採用されただけでも、600社余りある。宣伝用映画は、記録映画7部が製作されすでにアメリカへ送り上映された」と記載されている部分があるが、米国雑誌「LIFE」の表紙を飾った赤ちゃんの写真や、「ニューヨークタイムズ」などの米新聞の反日報道は、そういった国民党による「宣伝戦」の結果である。また、写真などはトリミングなどの技術を要し、巧妙に反日を煽る写真として使用されている。米国の南京大虐殺キャンペーンには、ゾルゲなどソ連コミンテルンスパイたちが関与してる可能性があるとも言われている。
所謂「南京虐殺」は日本軍の南京占領直後に開始されたと、戦後になってにわかに宣伝され、日本人が「南京虐殺」なるものについて聞かされたのは、東京裁判と、同時期に併行して、GHQの要請にしたがって作られ、家庭のお茶の間に流したNHK番組「真相はこうだ」を通じてであった。
その後、1971年8月から12月まで朝日新聞による本多勝一記者による「中国の旅」が連載。反日プロパガンダのたるもので、南京大虐殺の嘘を、日本のみならず世界に誤った情報を発信した。しかし、慰安婦問題については一昨年、謝罪と記事削除をしたが、この南京大虐殺の誤報は未だに謝罪、取り消しはされていない。
誤った歴史の流布に拍車がかかることとなった『ザ・レイプ・オブ・南京』だが、その後、藤岡信勝氏、東中野修道氏をはじめ、秦郁彦氏、阿羅健一氏、水間政憲氏など知識人たちが南京虐殺について論破している。しかし、こういった情報も世界には届かず、2015年には南京大虐殺が世界遺産に登録され、反日色は世界の一般常識でもあるのかと思わせる状況である。
・中国、韓国の横暴
かつて韓国との間で、「日韓歴史共同研究」というものがあった。2010年3月に報告書が出されたが、〝政治的に「正しい歴史」〟を掲げる韓国側と〝客観性を担保〟しようとする日本側の認識の隔たりがはっきりと出ていた。日韓両国が「日本=加害者・韓国=被害者」という歴史認識を固定化し、日本側が摩擦回避のためにそれを続ければ、共同研究をいくら続けても「事実」に基づく歴史の共通認識の形成には到らない。
日本にとって韓国は東アジアの安全保障上、北朝鮮、そして中国と対峙していくためにも、日米対中韓という関係ではなく、日米韓対中国という関係に引き戻さなければならない。しかし、その現実を無視するかのごとく韓国は反日活動を繰り返す。韓国出身の呉善花拓殖大学教授は評論家の西尾幹二氏との対談で「韓国人には自己相対比がなかなかできません。とても自己中心的で、・・・他者に照らして自分を省みることがないのです。比較ということでも、関心はもっぱら『どちらが上か下か』になります」と話し、そして、月刊正論2016年3月号の加藤達也産経新聞前ソウル支局長との対談で日韓合意に触れ、「たとえ、韓国政府が再び慰安婦問題で反日を持ち出せば、世界から非難されるからできないであろうと思ったとしても、そんなことを気にする韓国では口約束ですからね」と述べている。韓国が歴史に史実に向き合わない限り、韓国の日本批判は止むことは無いし、韓国との歴史認識に関する合致点は今のままでは見出せないであろう。
一方、中国はどうか。『Chaina2049』の著者でハドソン研究所中国センター所長、国防総省顧問のマイケル・ピルズベリー氏が本書の冒頭で、「米国は中国の国家戦略の根底にある意図を見抜くことができず、騙され続けてきた」と告白する。これほど中国に精通し、中国要人と交流のあったマイケル・ピルズベリー氏でさえ中国に欺かれ続け、それを知らずに歴代米国政権が対中政策をピルズベリー氏の助言や勧告に基づいて進めてきた事実を知って愕然とする。そして、内向きになった米国に対し、中国のその「勢」を見あまることなく、共産党創設100年の節目を5年後に控え、確実に対峙し続けてくるであろうと考える。
2013年9月、シリアへの軍事介入を否定した演説で「アメリカは世界の警察ではない」と宣言してから、ロシアはクリミア半島を奪い、中国は南シナ海での南沙諸島にある暗唱の埋め立てをはじめ、侵略的行動が加速した。また、ISを始めとするテロリストたちは世界各国でテロを繰り返し、勢いを増している。そして、今年に入り中国の漁船と公船が連日のように尖閣諸島周辺に押し寄せ、日本への挑発を繰り返している。ここ数年南シナ海への外洋拡張を続けてきた中国が、再び東シナ海にシフトし始めたことを強く印象づける。こうした背景を考えると、世界に対して米国が負ってきた責任の放棄は、米国に対する失望や侮蔑につながっている。
「勢」を得た中国は、日米ならびに韓国も含めた米国友好国の分断を確実に図っていくことであろう。そのため、「慰安婦問題」など歴史戦は日本を貶め、米国や韓国との分断を図る有効な手段であり、これからも歴史戦の勢いはますます増していくであろう。
・真の敵は反日日本人
戦後70年の8月14日、安倍晋三首相は「内閣総理大臣談話」を発表した。その中で、「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と述べた。その談話は眼前の歴史戦に大きくプラスに働く記述になっているが、歴史戦の元祖で戦勝国により敗戦国を裁いた国際法違反の復讐劇であった東京裁判史観の払拭という点では不十分であったと感じる。歴史戦は中国や韓国ばかりを相手にするものではない。欧米諸国、ユネスコ、そして、最たる敵は日本の独立回復に反対した共産党や社会党の残党と彼らに同調する左翼及び進歩的文化人と言われる系統の日本人である。占領期に連合国軍総司令部(GHQ)が実施した「戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画」(WGIP)は、今も形を変えて教育現場に生き続けている現状を認識しなければならない。
大東亜戦争後、アメリカ国内のソ連のスパイたちがモスクワの諜報本部とした秘密通信をアメリカ軍事情報部が秘密裡に傍受解読した記録の「ヴェノナ文書」や「ミトロヒン文書」、米軍がビルマ(ミャンマー)・ミートキーナ(同ミチナ)で捕らえた朝鮮人慰安婦20人から尋問した「米国戦争情報戦資料『心理戦チーム報告書』」など、戦争時における公文書が発掘され、ラストボロフ事件、レフチェンコ事件などコミンテルンのスパイ行為なども含め、歴史の真実が次々と暴かれている。しかし、正しい情報が浸透せず、事実を捻じ曲げられた歴史が流布され続けている。
世界は中国、韓国などの反日勢力に真実を捻じ曲げられた歴史の流布により、日本の国際社会に対する発信不足により、日本は貶められている現状が克服できていない。日本人も正しい歴史を認識しておらず、中国の「南京大虐殺」に対する反論、韓国の「従軍慰安婦問題」に対する反論ができない日本人も少なくないのである。
歴史認識問題において、韓国や中国、さらにはアメリカや欧州で、「日本は歴史問題を解決していない、戦争の歴史を清算していない」という主張があるが、それは1970年代には、もう過去の問題となっていて、外交問題にはならなかった。いったんは過去となったこの問題を1980年代に復活した発端は、すべて日本人の手による、日本発のものであった。歴史教科書問題、首相の靖国神社参拝問題、従軍慰安婦問題。どれも1980年代以降に問題化し、日本の中から生まれたメイド・イン・ジャパンの問題なのである。中国や韓国にとっては有難いテーマなので、そのカードを使うことになる。また、ユネスコ記憶遺産に慰安婦問題の申請登録を主導しているのは明星大学の高橋史朗教授によれば、日本のNPO法人「女たちの戦争と平和人権基金」や「日本の戦争責任資料センター」であるというのは先述した通りであるが、このように、左翼リベラリズムの人々が、歴史認識問題を再生産しているのである。
左翼リベラリズムが浸透している反日左翼の市民団体、NHK、TBS、テレビ朝日、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、共同新聞や地方新聞など反日マスコミ、教育界、さらには歴史学会、司法界なども反日行動、情報を流布している。反日マスコミは事実をすり替えた報道を繰り返し、読者や視聴者はそれを知らぬ間に信じてしまうような情報操作が行われる。教育機関は事実と反した歴史教育を行ない、先生の反日思想に伴う教育指導に歯止めがかからない。また、左翼が未だに根強く社会に反日運動を繰り返す蔓延った状況にあるのが現状である。このように、日本を貶めているのは日本人自身なのである。
・歴史戦に勝つために―日本人の国家観、歴史観を持った人材の育成が不可欠
『韓国には言うべきことはキッチリ言おう!-いわれなき対日批判「サクサク反論ガイド』(上島嘉郎著・ワニブックスPLUS新書」は以下のように論じている。
―(歴史戦が)国際社会でいまも続いていることは、紛争や戦争状態の停止や終結にともなう「和解」や「示談」の条件を少しでも自国に有利となるような情報戦、宣伝戦です。そして、「現実に存在し得る平和」とは、各国が砲弾やミサイルをもって相手の街々を破壊したり人命を傷つけたりすることなく、情報や宣伝によって相手を自らの制御下に置く「洗脳戦」を継続している状態のことです。(中略)日本が現在の国際秩序を尊重する立場から「洗脳戦」を戦うとすれば、最低限の事実は記憶しておく必要があります。(中略)日本人は、情報戦、宣伝戦の渦中にあることを自覚し、攻勢に転じていかねばなりません。そのため、自らの物の考え方、思想の根本を疑ってみることが必要です。私たちが70年過ごしてきた「戦後」という時間を支配した情報、言論空間はいかなるものだったのか。そこで私たちの思想は無意識、無自覚にある方向、ある価値観に規定されてきたのではないのか。-
戦後、我々はGHQの占領政策により、「閉ざされた言論空間」の中で、間違った「歴史」を洗脳され続けてきた。洗脳戦に敗れ続けてきたのである。しかも、敗れ続けている自覚さえも持たずに。
「最低限の事実を記憶しておく必要がある」-この最低限の事実を記憶していくために、そして、日本を貶める国際社会、反日日本人に対峙するために、何が必要であろうか。
正しい歴史を学び、自らの物の考え方、思想の根本をリセットすること、父祖の歴史に対して東京裁判史観から解き放たれた視点と思考を持つ正当な認識が必要である。そして、学んだ正しい歴史の真実、知識を自己満足で終わらせることなく、SNSなどあらゆる手段を駆使して自らが発信者となり、同じ思いの仲間を増やし、その輪を広めていくこと。間違った情報には正しい情報を提示し、また、国や教育機関だけに委ねるのではなく、自らが家族、友人、知人、そして多くの日本人、また国際社会に、正しい歴史を「冷静に理性を持って、客観的な視点で伝え続けていくこと」である。
正しい国家観、歴史観を持つ人材を育成する「教育」改革も不可欠である。日本という国の素晴らしさを認識し、先人から受け継がれた文化・伝統を継承し、その先人の思い、精神を確立して、世界に、反日日本人や左翼リベラリズムに対峙できる知識と心を持った「継承者」を育てていくこと。
神道、武士道の精神をもっている日本が世界の赤化を防ぐ最後の砦であるとカナダ、イギリスに住む知人が言う。「武士道」の考え方、「教育勅語」の教えは、われわれ日本人にとって先人から引き継ぐべき、そして大震災に見舞われても盗人一人も出ない日本人の精神の根底を築き上げている考え方である。
歴史の真実はひとつである。繰り返すが、歴史の事実を正確に学び、東京裁判史観から目覚め、真っ当な教育を推進し、真っ当な人材を育成して、反日日本人、左翼リベラリズム、そして国際社会と対峙していくため、冷静に理性を持って伝え続けていくことを疎かにしてはならない。日本を変えることができるのは日本人だけなのである。
参考文献
・大東亜戦争への道 中村粲著(展転社)
・新脱亜論 渡辺利夫著(文春新書)
・国家覚醒 渡辺利夫著(海竜社)
・日本人が気付かない世界一素晴らしい国・日本 ケビン・M・ドーク著(WAC)
・中国・韓国との新・歴史戦に勝つ! ケント・ギルバート、室谷克美、石平著(悟空出版)
・Chaina2014 マイケル・ピルズベリー著(日経BP社)
・『ザ・レイプ・オブ・南京』の研究 藤岡信勝、東中野修道著(祥伝社)
・日本の敵 よみがえる民族主義に備えよ 宮家邦彦著(文春新書)
・日本の敵 桜井よしこ著(新潮社)
・韓国には言うべきことをキッチリ言おう! 上島嘉郎著(ワニブックス)
・月刊正論2014年12月号
・月刊正論2015年5月号、10月号
・月刊正論2016年3月号、8月号、9月号、10月号
・別冊正論8号「日中歴史の真実」
・別冊正論10号「東京裁判の呪縛を断つ」
・別冊正論15号「中国共産党 野望と謀略の90年」
・正論2014年12月特別増刊号「朝日新聞と慰安婦・歴史捏造の罪」
昨年の12月、阿羅氏の南京事件に関する活動に対し、産経新聞では「昭和12(1937)年12月の南京攻略戦に参加した元兵士らへの取材を通じ、当時の南京の実像に迫ってきた近現代史研究家の阿羅健一氏(78)が、旧日本軍の南京入城から85年に当たる13日、「南京事件はなかった 目覚めよ外務省!」(展転社)を発刊した。阿羅氏は、外務省がホームページ(HP)に掲載している「南京事件」に関する記述に根拠となる資料が同省に存在しないことを突き止め、「根拠がないならば、HPの記述を撤回すべきだ」と訴えている。85年前当時、中華民国の首都だった南京をめぐっては、旧日本軍が攻略、占領後の6週間で、市民ら30万人以上を虐殺したなどと中国は主張している。阿羅氏は当時の南京にいた高級将校や下士官、記者、画家、写真家ら300人以上への聞き取り調査や国内外の歴史資料の検証などを通じ、一般市民の虐殺はなかったと判断している。一方、外務省は「南京事件」についてHP上で「日本政府としては、日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています」と説明する。ただ、阿羅氏が昨年3月、外務省に「根拠となった資料」の公開を求めたところ、今年1月になって「該当文書を確認できなかったため、不開示(不存在)とした」との通知があった」と報道している。
江崎氏も月刊正論5月号で指摘しているが、外務省は根拠となる資料を持っていないことを明らかにしたことは、とても重要で、阿羅氏の最大の功績である。
ただ、歴史的事実を明らかにすることと、外交や国際政治のなかで、歴史認識問題が横たわっている土俵でどう勝つか、という議論は別であるとも話している。
私も本当にそうだと感じている。2014年に参加したリーダーシッププログラムで米国に行き、米国共和党系の有識者の話を聞いた際に、このままでは歴史戦に勝てないと痛感した。
その時の経験をもとに平成28(2016)年に「歴史戦に勝つために」との内容で論文を書いたことがある。7年前の論文ではあるが、私自身の手段方法は変わっても、思いは未だに変わらない。恥ずかしながら、以下の通り公開したい。ご笑覧いただけたら幸いである。
(以下)
2014年12月、「日本の将来を担う次世代リーダー達が米国大学主催の日米親善教育プログラムに参加し、現地有識者との意見交換することにより、『対話を通じた信頼関係』を築き、日米関係のさらなる発展を目指す」ことを目的とした「第8回ジョージタウン大学日米リーダーシッププログラム」に私は参加することができた。そのプログラムにはジョージタウン大学での日米関係論、国際関係論等の講義、議会見学及び議員、有識者との人材交流・意見交換、ヘリテージ財団訪問などが用意されていた。ブッシュ政権時代にホワイトハウス高官だったジョージタウン大学のマイケル・グリーン准教授、ビクター・チャ教授、ブラッドリー・ブレイクマン教授、さらにはカール・ローブ元次席補佐官、大統領政策・戦略担当上級顧問、そしてケビン・ドーク教授を講師に迎え、安全保障、朝鮮半島問題、米大統領選、そしてリーダーシップについての講義を受けた。
2014年11月27日の産経ニュースに慰安婦問題の分析を進める米国人ジャーナリスト、マイケル・ヨン氏とその調査班と、産経新聞の取材により、慰安婦問題に関する調査結果部分の全容が確認されたと公開された。その「米国戦争情報局資料『心理作戦チーム報告書』によると、「慰安婦たちは将兵とスポーツやピクニックを楽しみ、当時としては高価な蓄音機を持ち、町に買い物に出ることができた。日本人兵士が結婚を申し込む例も多く、実際に結婚に至ったケースもあった。平均月収は兵士の数十倍に上り、彼女らは金を多く持っていた」という。また、その報告書には慰安婦のことを「sex slave」ではなく「comfort girl」と表記されおり、「慰安婦は売春婦(prostitute)であるに過ぎない」と結論付けている。当時、敵国であった米軍の公式文書が「慰安婦=性奴隷」を否定していたのだ。
私は、講師陣にこの内容を伝えるとともに慰安婦問題に対する見解を求めるため、以下の質問をした。
「戦争中、慰安婦『comfot girl』を連れてきたのは朝鮮人仲介業者であった。また、朝鮮人仲介業者による慰安所は存在し、そこでは『商行為』が確認されている。よって、『sex slave』ではなく、軍が強制的に女性を拉致し、連行した事実はないと考えるが、先生方のご意見を聞かせてください」と。すると、どの教授もこの報告書のことを理解していなかった。知日派で知られるマイケル・グリーン准教授は「マイケル・ヨンはブローカーでしょ?」と発言。さらに「目の前で実際に体験した泣いているお婆さんがいるじゃないの。この問題は今や人権問題となって論点が変わっている」と答えた。
また、2013年11月14日に慰安婦問題について「米国は日本に謝罪を促すべき」と論考する論文を東亜日報に発表した、ビクター・チャ教授は「あなたの言った内容を唱える者もいるが多数派ではない。歴史問題は歴史家に任せればよい」とし、「決して解決するものではない」と答えた。
ヘリテージ財団では「尖閣諸島をめぐる東アジアの安全保障」について有意義なディスカッションが繰り広げられたが、その中で、財団側は米国における韓国との人材交流が活発であるとの話に触れ、「何かあったとき、我々は韓国人が何を考えるかは分かるが、日本人がどう考えるかは分からない」と語った。日本人との人材交流も、日本からの寄付も極めて限定的だとし、日本人と米国人におけるコミュニケーションが公私共に不足していることが露骨に論じられた。さらに、米国では各大学における中国研究がすすんでおり、そこには中国より研究費として多額な寄付が投じられているとも語られた。
中韓の米国におけるロビー活動は増強の一途にある事実を感じ、また、米国知識人にさえ日本の立場が理解されていないと痛感。「今のままでは歴史戦に永遠に勝つことができない」ことを実感した。この経験を踏まえ、日本が世界において歴史戦に勝つために、何をしなければならないのか。未だに止まない歴史戦の現状認識と、これからの日本のあるべき姿、そして自分の見解を述べていきたい。
・世界に主戦場を移した「歴史戦」
2014年8月5日から2日間、朝日新聞はそれまでの慰安婦報道についての特集記事を掲載し、過去の吉田清治氏の証言をめぐる記事を取り消した。そして、9月11日には謝罪会見を開いたが、慰安婦問題は世界に対して未だ反日の材料として取り上げられている。
日韓基本条約の発効から50周年となった2015年12月28日、安倍晋三首相の指示を受けた岸田文雄外相が訪韓し、尹炳世(ユンピョンセ)外相と会談し、いわゆる従軍慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的に解決される」との認識で合意した。この問題について国際社会で非難、批判することを相互に控えると確認し、併せて元慰安婦を支援する事業のため韓国政府が財団を設立し、日本政府が予算十億円を一括拠出することでも一致した。しかし、合意内容は玉虫色で「互譲」ではなく、日本側は肝心な点で譲歩したといわざるを得ない。それは安倍首相が表明したお詫びのなかで、「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と「軍の関与」にわざわざ言及したことである。この「言葉」が海外で「あの安倍首相が軍の関与を認めた」との誤解を招き、海外に住む韓国人は日本人に対し、攻撃をますます強めている。
韓国の日本大使館前に設置された「慰安婦少女像」は未だに撤去されず、その慰安婦像は、米国のグレンデール市、デトロイト市、フラートン市ほか、オーストラリア、カナダで設置。さらにはドイツのフライブルク市に、欧州で初めてとなる「慰安婦少女像」の建立が予定されていたが、9月21日の産経新聞によると、フライブルグ市で計画していた慰安婦像の設置は、独側の拒否で実現不可能となったと発表したものの、その勢いはとどまるところを知らない。
また、慰安婦に関連する資料のユネスコ記憶遺産への登録を目指す韓国の民間団体は、日本や中国、オランダなど各国の市民団体と共同で、5月31日付で資料の登録申請をした。その申請は韓国に事務局を置く「国際連帯委員会」が中心となって進め、申請資料は計2744件に上り、音声記録を含む元慰安婦らの証言記録や写真、市民団体による調査資料などという。しかし、月刊正論2016年10月号に高橋史朗明星大学特別教授が寄稿した「やぱりヒドい世界記憶遺産の申請文書」によると、日本の「女たちの戦争と平和資料館」と「日本の戦争責任資料センター」が大きな役割を果たし、日本の資料が申請の中心になっていることを明らかにしている。
今回の申請は、慰安婦問題は今後蒸し返されることはないとした「日韓合意」の狙いが外れたことを意味する。むしろ、韓国一国のみならず、国際的な「対日包囲網」が築かれるほどに、慰安婦問題が悪化したと言える。
これに対し、日本政府は即座に反対しなければならないが、先の合意には、「両政府は、国連など国際社会でお互いに非難・批判することは控える」との内容が含まれているため、合意によって、日本は政府として反論する手足を自ら縛ったわけである。
南京事件についても間違った歴史認識が独り歩きをしている。昨年10月にユネスコ記憶遺産に中国の「南京大虐殺文書」が登録された問題で、中国が登録申請の際にユネスコに提出したのは、資料の一覧と、資料を保管する7カ所の公文書館名を記しただけの目録だったことがわかった。南京文書の目録に一覧として挙げられた資料は十数種類。「南京市民の羅瑾が死の危険を冒して保存した16枚の写真」や、「大虐殺」の様子を書き留めた唯一の中国人とされる程瑞芳の日記も含まれているという。これらの資料について中国側は一方的に「虐殺の証拠」と主張しているが、多くは日本人学者らの調査によって否定されており、中国側の資料のずさんさが改めて浮き彫りになったといえる。
世界において南京大虐殺の嘘が広く知らしめすその原動力となった故アイリス・チャン氏著『ザ・レイプ・オブ・南京』だが、その内容は嘘で塗り固められているとして1999年に発行された『「ザ・レイプ・オブ・南京」の研究-中国における「情報戦」の手口と戦略』(藤岡信勝・東中野修道共著、祥伝社)より微塵に反論されている。
―初めて30万人虐殺が日本で主張されるようになったのは本多勝一著『中国の旅』(1972年)からである。しかし、注記として記されているにしか過ぎなかった。30万人虐殺説が大手を振るって歩き始めるのは、1982年に出た洞富雄(ほら・とみお)著『決定版南京大虐殺』からと言えよう。この頃になると、南京戦に参戦した将兵のほとんどが、社会の第一線を退いていた。それを待っていたかのように、南京虐殺を主張する声が強まっていったのである。しかし、ここまではまだ国内問題という側面が強かった。
ところが、1997年末に、アメリカで『ザ・レイプ・オブ・南京』が、そしてまた、南京安全地帯国際委員会委員長であったジョン・ラーベの日記が出版されるに及んで、事態は一変した。南京虐殺は国際問題へと発展したのである。『ザ・レイプ・オブ・南京』は南京事件を題材にしながら、その狙いとしているのは、実は日本の文化と歴史の全面否定で、チャンは著書の中で「明治新政府が全市民の道徳規範として、武士道という武士の倫理を採用した」ことが、やがて日本軍に残虐行為を行わせることになった―と論じている。
多くの嘘を事実として記したこの『ザ・レイプ・オブ・南京』は世界で大ベストセラーになり、この著書の内容を木端微塵に反論している書籍が多数発行されているにも関わらず、それを無視するかの如く、日本の嘘が世界に広まっているのが現状である。
そもそも、1946年に結成されたユネスコだが、その前身は、国際連盟国際教育局(事務局長は児童中心主義の心理学を主導したジャン・ピアジェ)であり、その活動は新教育者連盟のメンバーによって運営されていた。こうした経緯から、ユネスコは、フランス共産党所属の心理学者アンリ・ワロンらが中心となって結成された。所謂左翼組織である。
現ユネスコの事務局長で、次期国連事務総長として最有力視されているイリナ・ボコバ氏は共産主義国家ブルガリアの出身で、モスクワ国際関係大学を卒業後、ブルガリア議会の議員を経て2009年にユネスコ事務局長に選出された。ユネスコの記憶遺産に中国が申請した「南京大虐殺文書」を登録する最終決定を下し、また、2015年9月に北京で行われた抗日戦争勝利70年記念行事にも出席している。しかも、このたびの慰安婦に関連する資料のユネスコ記憶遺産への登録を目指す韓国の民間団体は、日本や中国、オランダなど各国の市民団体と共同で、資料の登録申請をしたこの問題に対し、現イリナ・ボコバユネスコ事務局長が、「複数の国、団体を交えて申請した方がいい」と中国に助言したと、国連で「慰安婦は性奴隷ではない」と訴えた杉田水脈元衆議院議員が講演会などで明らかにしている。こうして、中国、韓国が主導する「歴史戦」は欧米諸国、ユネスコなど世界を巻き込み、日本を貶める戦略を着々と遂行しているのである。
・いわゆる「従軍慰安婦問題」
「従軍慰安婦」という言葉が本格的に使われ始めたのは、1973年に発行された、元毎日新聞記者で作家の千田夏光氏による『従軍慰安婦』という本からである。
従軍慰安婦という虚構をさらにおどろおどろしく惨状に描いた本が1983年に吉田清治という自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長が「私は奴隷狩りを行った」と書いた『私の戦争犯罪-朝鮮人強制連行』である。この「職業的話術師」の話を大いに持ち上げたのが朝日新聞で、韓国政府も国連人権委員会も吉田証言を引用して報告書を作り、日本非難の根拠とした。事実上、朝日新聞が吉田証言に信憑性と権威を与えたのだ。さらに、1991年8月11日付けの朝日新聞(大阪本社版)に「日中戦争や第二次大戦の際、『女子挺身隊』の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた『朝鮮人従軍慰安婦』のうち、1人がソウル市内に生存していたことが分かり、『韓国挺身隊問題対策協議会』(中略)が聞き取り作業を始めた」という記事が掲載された。筆者は植村隆記者(当時)である。この記事が大きなきっかけとなり、91年秋ごろから92年にかけて、朝日新聞を中心に国内メディアは集中的に慰安婦問題報道を展開し、各社そろっての一大キャンペーンとなった。
これに対し、戦前戦中の事情を知っている人たちが、朝日新聞が宣伝する吉田清治的な「慰安婦強制連行」は事実無根であり、戦後生まれの人たちは騙されているのだ-と強い違和感を持って、元日本軍人、慰安婦たちの性病検査をした軍医の家族らなど、慣れない原稿を書いて、雑誌「正論」編集部に持ち込んできたほか、故中村粲獨協大学名誉教授が主宰するシンクタンク「昭和史研究所」が「昭和史研究所会報」にその内容を掲載し、そして、その一部を月刊正論2014年12月号に掲載した。いずれも慰安婦の強制連行はなかったとするものである。しかし、この事実は世界どころか日本国内にこの情報が浸透するまでには至っていない。
・「南京大虐殺」の嘘
「国民党極秘文書」である『中央宣伝部国際宣伝処工作概要』が戦後、発掘された。その特徴は①同時代の記録②個人的な回想とか日記などとは違って中国国民党中央宣伝部の公式記録③外部には見せてはならない一部の関係者だけが知り得た最高機密である。
この極秘文書とは別に「宣伝工作概要」という小冊子の中に次の言葉が出てくる。
「宣伝戦で敵を包囲して、最後に勝利を勝ち取る」
これが、中央宣伝部が目指した課題であり、その実現のため中央宣伝部は全力投入していった。その内容は「撮影した宣伝用写真を常に送って、国内外の大新聞、雑誌、グラビア版に採用されただけでも、600社余りある。宣伝用映画は、記録映画7部が製作されすでにアメリカへ送り上映された」と記載されている部分があるが、米国雑誌「LIFE」の表紙を飾った赤ちゃんの写真や、「ニューヨークタイムズ」などの米新聞の反日報道は、そういった国民党による「宣伝戦」の結果である。また、写真などはトリミングなどの技術を要し、巧妙に反日を煽る写真として使用されている。米国の南京大虐殺キャンペーンには、ゾルゲなどソ連コミンテルンスパイたちが関与してる可能性があるとも言われている。
所謂「南京虐殺」は日本軍の南京占領直後に開始されたと、戦後になってにわかに宣伝され、日本人が「南京虐殺」なるものについて聞かされたのは、東京裁判と、同時期に併行して、GHQの要請にしたがって作られ、家庭のお茶の間に流したNHK番組「真相はこうだ」を通じてであった。
その後、1971年8月から12月まで朝日新聞による本多勝一記者による「中国の旅」が連載。反日プロパガンダのたるもので、南京大虐殺の嘘を、日本のみならず世界に誤った情報を発信した。しかし、慰安婦問題については一昨年、謝罪と記事削除をしたが、この南京大虐殺の誤報は未だに謝罪、取り消しはされていない。
誤った歴史の流布に拍車がかかることとなった『ザ・レイプ・オブ・南京』だが、その後、藤岡信勝氏、東中野修道氏をはじめ、秦郁彦氏、阿羅健一氏、水間政憲氏など知識人たちが南京虐殺について論破している。しかし、こういった情報も世界には届かず、2015年には南京大虐殺が世界遺産に登録され、反日色は世界の一般常識でもあるのかと思わせる状況である。
・中国、韓国の横暴
かつて韓国との間で、「日韓歴史共同研究」というものがあった。2010年3月に報告書が出されたが、〝政治的に「正しい歴史」〟を掲げる韓国側と〝客観性を担保〟しようとする日本側の認識の隔たりがはっきりと出ていた。日韓両国が「日本=加害者・韓国=被害者」という歴史認識を固定化し、日本側が摩擦回避のためにそれを続ければ、共同研究をいくら続けても「事実」に基づく歴史の共通認識の形成には到らない。
日本にとって韓国は東アジアの安全保障上、北朝鮮、そして中国と対峙していくためにも、日米対中韓という関係ではなく、日米韓対中国という関係に引き戻さなければならない。しかし、その現実を無視するかのごとく韓国は反日活動を繰り返す。韓国出身の呉善花拓殖大学教授は評論家の西尾幹二氏との対談で「韓国人には自己相対比がなかなかできません。とても自己中心的で、・・・他者に照らして自分を省みることがないのです。比較ということでも、関心はもっぱら『どちらが上か下か』になります」と話し、そして、月刊正論2016年3月号の加藤達也産経新聞前ソウル支局長との対談で日韓合意に触れ、「たとえ、韓国政府が再び慰安婦問題で反日を持ち出せば、世界から非難されるからできないであろうと思ったとしても、そんなことを気にする韓国では口約束ですからね」と述べている。韓国が歴史に史実に向き合わない限り、韓国の日本批判は止むことは無いし、韓国との歴史認識に関する合致点は今のままでは見出せないであろう。
一方、中国はどうか。『Chaina2049』の著者でハドソン研究所中国センター所長、国防総省顧問のマイケル・ピルズベリー氏が本書の冒頭で、「米国は中国の国家戦略の根底にある意図を見抜くことができず、騙され続けてきた」と告白する。これほど中国に精通し、中国要人と交流のあったマイケル・ピルズベリー氏でさえ中国に欺かれ続け、それを知らずに歴代米国政権が対中政策をピルズベリー氏の助言や勧告に基づいて進めてきた事実を知って愕然とする。そして、内向きになった米国に対し、中国のその「勢」を見あまることなく、共産党創設100年の節目を5年後に控え、確実に対峙し続けてくるであろうと考える。
2013年9月、シリアへの軍事介入を否定した演説で「アメリカは世界の警察ではない」と宣言してから、ロシアはクリミア半島を奪い、中国は南シナ海での南沙諸島にある暗唱の埋め立てをはじめ、侵略的行動が加速した。また、ISを始めとするテロリストたちは世界各国でテロを繰り返し、勢いを増している。そして、今年に入り中国の漁船と公船が連日のように尖閣諸島周辺に押し寄せ、日本への挑発を繰り返している。ここ数年南シナ海への外洋拡張を続けてきた中国が、再び東シナ海にシフトし始めたことを強く印象づける。こうした背景を考えると、世界に対して米国が負ってきた責任の放棄は、米国に対する失望や侮蔑につながっている。
「勢」を得た中国は、日米ならびに韓国も含めた米国友好国の分断を確実に図っていくことであろう。そのため、「慰安婦問題」など歴史戦は日本を貶め、米国や韓国との分断を図る有効な手段であり、これからも歴史戦の勢いはますます増していくであろう。
・真の敵は反日日本人
戦後70年の8月14日、安倍晋三首相は「内閣総理大臣談話」を発表した。その中で、「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と述べた。その談話は眼前の歴史戦に大きくプラスに働く記述になっているが、歴史戦の元祖で戦勝国により敗戦国を裁いた国際法違反の復讐劇であった東京裁判史観の払拭という点では不十分であったと感じる。歴史戦は中国や韓国ばかりを相手にするものではない。欧米諸国、ユネスコ、そして、最たる敵は日本の独立回復に反対した共産党や社会党の残党と彼らに同調する左翼及び進歩的文化人と言われる系統の日本人である。占領期に連合国軍総司令部(GHQ)が実施した「戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画」(WGIP)は、今も形を変えて教育現場に生き続けている現状を認識しなければならない。
大東亜戦争後、アメリカ国内のソ連のスパイたちがモスクワの諜報本部とした秘密通信をアメリカ軍事情報部が秘密裡に傍受解読した記録の「ヴェノナ文書」や「ミトロヒン文書」、米軍がビルマ(ミャンマー)・ミートキーナ(同ミチナ)で捕らえた朝鮮人慰安婦20人から尋問した「米国戦争情報戦資料『心理戦チーム報告書』」など、戦争時における公文書が発掘され、ラストボロフ事件、レフチェンコ事件などコミンテルンのスパイ行為なども含め、歴史の真実が次々と暴かれている。しかし、正しい情報が浸透せず、事実を捻じ曲げられた歴史が流布され続けている。
世界は中国、韓国などの反日勢力に真実を捻じ曲げられた歴史の流布により、日本の国際社会に対する発信不足により、日本は貶められている現状が克服できていない。日本人も正しい歴史を認識しておらず、中国の「南京大虐殺」に対する反論、韓国の「従軍慰安婦問題」に対する反論ができない日本人も少なくないのである。
歴史認識問題において、韓国や中国、さらにはアメリカや欧州で、「日本は歴史問題を解決していない、戦争の歴史を清算していない」という主張があるが、それは1970年代には、もう過去の問題となっていて、外交問題にはならなかった。いったんは過去となったこの問題を1980年代に復活した発端は、すべて日本人の手による、日本発のものであった。歴史教科書問題、首相の靖国神社参拝問題、従軍慰安婦問題。どれも1980年代以降に問題化し、日本の中から生まれたメイド・イン・ジャパンの問題なのである。中国や韓国にとっては有難いテーマなので、そのカードを使うことになる。また、ユネスコ記憶遺産に慰安婦問題の申請登録を主導しているのは明星大学の高橋史朗教授によれば、日本のNPO法人「女たちの戦争と平和人権基金」や「日本の戦争責任資料センター」であるというのは先述した通りであるが、このように、左翼リベラリズムの人々が、歴史認識問題を再生産しているのである。
左翼リベラリズムが浸透している反日左翼の市民団体、NHK、TBS、テレビ朝日、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、共同新聞や地方新聞など反日マスコミ、教育界、さらには歴史学会、司法界なども反日行動、情報を流布している。反日マスコミは事実をすり替えた報道を繰り返し、読者や視聴者はそれを知らぬ間に信じてしまうような情報操作が行われる。教育機関は事実と反した歴史教育を行ない、先生の反日思想に伴う教育指導に歯止めがかからない。また、左翼が未だに根強く社会に反日運動を繰り返す蔓延った状況にあるのが現状である。このように、日本を貶めているのは日本人自身なのである。
・歴史戦に勝つために―日本人の国家観、歴史観を持った人材の育成が不可欠
『韓国には言うべきことはキッチリ言おう!-いわれなき対日批判「サクサク反論ガイド』(上島嘉郎著・ワニブックスPLUS新書」は以下のように論じている。
―(歴史戦が)国際社会でいまも続いていることは、紛争や戦争状態の停止や終結にともなう「和解」や「示談」の条件を少しでも自国に有利となるような情報戦、宣伝戦です。そして、「現実に存在し得る平和」とは、各国が砲弾やミサイルをもって相手の街々を破壊したり人命を傷つけたりすることなく、情報や宣伝によって相手を自らの制御下に置く「洗脳戦」を継続している状態のことです。(中略)日本が現在の国際秩序を尊重する立場から「洗脳戦」を戦うとすれば、最低限の事実は記憶しておく必要があります。(中略)日本人は、情報戦、宣伝戦の渦中にあることを自覚し、攻勢に転じていかねばなりません。そのため、自らの物の考え方、思想の根本を疑ってみることが必要です。私たちが70年過ごしてきた「戦後」という時間を支配した情報、言論空間はいかなるものだったのか。そこで私たちの思想は無意識、無自覚にある方向、ある価値観に規定されてきたのではないのか。-
戦後、我々はGHQの占領政策により、「閉ざされた言論空間」の中で、間違った「歴史」を洗脳され続けてきた。洗脳戦に敗れ続けてきたのである。しかも、敗れ続けている自覚さえも持たずに。
「最低限の事実を記憶しておく必要がある」-この最低限の事実を記憶していくために、そして、日本を貶める国際社会、反日日本人に対峙するために、何が必要であろうか。
正しい歴史を学び、自らの物の考え方、思想の根本をリセットすること、父祖の歴史に対して東京裁判史観から解き放たれた視点と思考を持つ正当な認識が必要である。そして、学んだ正しい歴史の真実、知識を自己満足で終わらせることなく、SNSなどあらゆる手段を駆使して自らが発信者となり、同じ思いの仲間を増やし、その輪を広めていくこと。間違った情報には正しい情報を提示し、また、国や教育機関だけに委ねるのではなく、自らが家族、友人、知人、そして多くの日本人、また国際社会に、正しい歴史を「冷静に理性を持って、客観的な視点で伝え続けていくこと」である。
正しい国家観、歴史観を持つ人材を育成する「教育」改革も不可欠である。日本という国の素晴らしさを認識し、先人から受け継がれた文化・伝統を継承し、その先人の思い、精神を確立して、世界に、反日日本人や左翼リベラリズムに対峙できる知識と心を持った「継承者」を育てていくこと。
神道、武士道の精神をもっている日本が世界の赤化を防ぐ最後の砦であるとカナダ、イギリスに住む知人が言う。「武士道」の考え方、「教育勅語」の教えは、われわれ日本人にとって先人から引き継ぐべき、そして大震災に見舞われても盗人一人も出ない日本人の精神の根底を築き上げている考え方である。
歴史の真実はひとつである。繰り返すが、歴史の事実を正確に学び、東京裁判史観から目覚め、真っ当な教育を推進し、真っ当な人材を育成して、反日日本人、左翼リベラリズム、そして国際社会と対峙していくため、冷静に理性を持って伝え続けていくことを疎かにしてはならない。日本を変えることができるのは日本人だけなのである。
参考文献
・大東亜戦争への道 中村粲著(展転社)
・新脱亜論 渡辺利夫著(文春新書)
・国家覚醒 渡辺利夫著(海竜社)
・日本人が気付かない世界一素晴らしい国・日本 ケビン・M・ドーク著(WAC)
・中国・韓国との新・歴史戦に勝つ! ケント・ギルバート、室谷克美、石平著(悟空出版)
・Chaina2014 マイケル・ピルズベリー著(日経BP社)
・『ザ・レイプ・オブ・南京』の研究 藤岡信勝、東中野修道著(祥伝社)
・日本の敵 よみがえる民族主義に備えよ 宮家邦彦著(文春新書)
・日本の敵 桜井よしこ著(新潮社)
・韓国には言うべきことをキッチリ言おう! 上島嘉郎著(ワニブックス)
・月刊正論2014年12月号
・月刊正論2015年5月号、10月号
・月刊正論2016年3月号、8月号、9月号、10月号
・別冊正論8号「日中歴史の真実」
・別冊正論10号「東京裁判の呪縛を断つ」
・別冊正論15号「中国共産党 野望と謀略の90年」
・正論2014年12月特別増刊号「朝日新聞と慰安婦・歴史捏造の罪」