議論すべき!日本の安全保障
2022.04.05
ロシアによるウクライナ侵略は、あってはならない民間人の被害をも助長させ、市民に深刻な被害が生じ、遺体が散乱するなど、見るに堪えない画像もネットに拡散されている。
報道にもあるように、ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、米CBSの番組で、特定集団を抹殺するための大量虐殺を意味する「ジェノサイド」だと主張した。

なぜ、ここまでプーチンはウクライナに固執をするのか。前回のブログでここ数年の事実を記したが、この怨念に近い執念は、もっと以前からあったのものだという。アメリカのプーチン研究第一人者、米ブルッキングス研究所シニアフェローのフィオナ・ヒルが冷静かつ細密にプーチンを分析した一冊『プーチンの世界―「皇帝」になった工作員―』(新潮社刊)を紹介したが、その中から、〈プーチン、ぶちギレる〉の一節をデイリー新潮もネットで公開しているので、引用し、紹介したい。


「2007年になると、プーチンはついにぶちギレた。アメリカやNATOに対して、堪忍袋の緒がついに切れたことを明言したのだ。

彼はドイツという窓口や07年2月のミュンヘン安全保障会議の場を利用して、アメリカの当局者や専門家に直接訴えかけた。怒りの矛先は、アメリカが一極支配する安全保障システム、国連という枠組みの外での軍事行動などに向けられ、そのアメリカ批判は痛烈を極めた。特に、NATO拡大に対するプーチンの考えはまったくぶれることがなかった。『NATOは前線部隊をわれわれの国境付近に配置してきた。それでも、われわれは条約義務を厳格に守り、こうした活動にも目をつぶってきた。NATOの拡大が、同盟そのものの現代化やヨーロッパの安全保障の確保と無関係であることはあまりに明らかだ。一方、お互いの信頼を貶める重大な挑発であることは間違いない。そこで訊こう。NATO拡大はいったい誰に対抗するためのものなのか?』。大規模な国際会議の場で、プーチン大統領がアメリカへの不満をぶちまけたのはそれが初めてだった。この『プーチンの痛烈な批判』は、ミュンヘンの会議会場だけでなく、アメリカ政府内でも不評を買うことになる。

1年後の2008年4月、ルーマニアのブカレストで開催されたNATOサミットの際にも、プーチンは報道陣に対してほとんど同じ発言を繰り返した。彼はミュンヘンでの自身の発言からさらに一歩踏み込み、NATOに対する根本的な疑問―ソ連崩壊後も活動を続け、容赦なく拡大しつづけるその姿勢から湧き上がる疑問―に立ち返り、次のように述べた。

『もはやソ連も東側諸国もワルシャワ条約機構も存在しない。それは間違いない。だとすれば、NATOは誰に対抗するためにあるのか?聞けば、今日の問題や課題を解決するためにあるという。何のことだ?どういう問題や課題なのだろう?…NATOブロックの存在自体が今日の課題や脅威の有効な解決策になるわけではない。この点には、ここにいる多くのみなさんが同意してくれると思う。それでも、NATOが今日の国際社会の要素、世界の安全保障の要素の一つだと認識しているからこそ、われわれは協力しているのだ。さきほど聞いた話によれば、NATOの拡大の目的はロシアに対抗することではないという。私はヨーロッパの歴史に大いに関心があり、その歴史を愛している。ドイツの歴史もしかりだ。ビスマルクはドイツだけでなく、ヨーロッパにとっても重要な政治指導者だった。彼は言った。こういう場合、重要なのはそうする意図があるかどうかではなく、そうする能力があるかどうかだ、と…われわれは東欧に配置していた部隊を撤退させたし、ロシアのヨーロッパ部分にあった大型の重兵器のほとんどを撤去した。それから、どうなった?われわれが今いるルーマニアの(米軍)基地、ブルガリアの(米軍)基地、ポーランドとチェコ共和国へのアメリカのミサイル防衛システムの設置。西側の軍のインフラがすべてわれわれの国境近くへと移動しているのだ』。

NATOのブカレスト・サミットは、ウラジーミル・プーチンに不愉快な驚きをもたらした。NATOはこのサミットにおいて、ジョージアとウクライナに加盟行動計画(MAP)を適用する予定だったが、ロシアの反対によって断念。しかし、最終的な加盟の可能性までは除外しなかった。2008年という年は、アメリカ、NATO、西側諸国との関係という点においてプーチンには厄難続きの年だった。2月、ロシアの反対もむなしく、アメリカや多くのヨーロッパ諸国がコソボを国家として承認し、ロシアの1999年の古傷に塩を塗ることになった(注:1999年はロシア国内で連続爆破事件が発生。これを受けロシアがチェチェンに侵攻。プーチンが大統領代行に指名された年でもある)。

プーチンはこれを『有害で危険な先例』と批判し、コソボの独立がジョージアからの分離を主張するアブハジアと南オセチアの両共和国に与える影響について指摘した。6月、ロシア大統領に就任したばかりのドミートリー・メドヴェージェフは、初となる重要な外交訪問と演説のため、ベルリンに向かった。そこで、彼はヨーロッパの新たな安全保障の体制と条約の策定を提案した。しかし、彼の提案はアメリカとその同盟国によってすぐさま拒否されてしまう。8月、ロシアはジョージアと交戦状態に陥った。それは、ミヘイル・サアカシュヴィリ大統領が南オセチアの分離派への軍事作戦開始を決定したことへの報復措置だった。ジョージア側の砲撃によって、南オセチアの首都ツヒンヴァリで活動していたロシア平和維持軍の兵士が死亡すると、ロシアによる全面的な軍事侵攻が始まった。当時、ロシアの大統領はメドヴェージェフであり、いちおうは彼が最高指導者ということになっていた。しかし、その裏でウラジーミル・プーチンが満を持して立ち上がったのは明々白々だった」。

2016年12月に発行されている著書であるから、少し古いかもしれないと思いきや、そんなことはない。デイリー新潮編集部曰く「前回のウクライナ侵攻、クリミア危機に至る前段として示された具体例であるはある。しかし、現在のロシアによるウクライナ侵略をみても、構造は何も変わっていない。むしろウクライナの政権が変わり、プーチンとの対立がより深まった現在は、さらに厳しくなっていると見るべきである。すなわち、この15年間、プーチンはキレっぱなしであり、その導火線はつねに剥き出しだったのだ」。
この指摘には深く賛同できる。


東野篤子筑波大准教授は3月9日付読売新聞オンラインで以下のように論評している。とても参考になるため、引用し、紹介したい。

「プーチン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大について、1991年に『米国が東方拡大はしないと口約束をした』と繰り返し述べている。ドイツの再統一交渉時、米国のベーカー国務長官らがロシアに語った内容を根拠としている。

しかし、NATOの一部政治指導者の発言を、NATOの総意とみなすのは無理がある。ましてや口頭での約束を破ったからといって、主権国家への侵攻が許されるわけがない。

『口約束』の後の展開も重要だ。ロシアは97年にNATOと基本議定書を結び、互いに敵と見なさないことを確認した。NATOの東方拡大を事実上黙認したことになる。

2002年には『NATOロシア理事会』新設に関するローマ宣言にプーチン氏が自ら署名し、NATOに接近した。ローマ宣言は、バルト3国のNATO加盟につながった。

ロシアとNATOが2度にわたって文書を交わし、協力の強化で合意している事実は重い。 『欧州の秩序から自分たちは 弾はじかれた』というロシアの主張も、あまりにも一方的だ。

欧州連合(EU)はプーチン政権に対し、政治・経済・文化などの分野で連携する『EUロシア共通空間』を含め、様々な構想を提示してきた。だが、その都度ロシアはEUの提案を退けた。EUとどのような協力関係を築きたいのか、ロシア側が具体的に示したことはない。

他方、欧州側にロシアとの意思疎通の努力が欠けていたのも事実だ。

ロシアが欧米をあからさまに敵視するようになったのは、08年のNATO首脳会議でジョージアとウクライナの将来加盟が約束されたのがきっかけだ。ロシアは14年、ウクライナの主権を認めることを柱とした1994年のブダペスト覚書を破り、クリミアを併合した。

その後、ロシアと欧州の対話の機会は著しく細ってしまった。欧州がロシアを厄介者のように扱った結果、ロシアが孤立感を深めていった側面は否定できない。

ウクライナ侵攻を踏まえ、先進7か国(G7)は、国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの主要銀行を排除するなどの経済制裁を決めた。

『オリガルヒ』と呼ばれるロシア新興財閥の幹部が、プーチン氏に忠誠を尽くしてきたのは損得勘定からだ。制裁で苦境に陥れば、オリガルヒらの『プーチン離れ』は一気に進むだろう。
クリミア併合以降、ウクライナはロシアの脅威にさらされ続けてきた。歴史をさかのぼれば、1930年代にはスターリンの政策によって『ホロドモール』と呼ばれる大飢饉ききんが引き起こされた。両国を『兄弟国家』と呼ぶのは短絡的で、ウクライナ国民の対露感情は複雑だ」。(中略)
ゼレンスキー氏が欧米への傾斜を強め、ロシアを刺激したことが侵攻につながったとの見方も出ているが、どの国にも同盟相手を自由に選ぶ権利はある。

ウクライナは、市場経済への移行や司法制度改革などに取り組み、一定の成果を出してきた。そうした『欧州化』をロシアが懸念した結果が今回の侵攻だとするなら、ウクライナに非はない。 瑕疵かしのない側に『降伏したらどうか』とか、『NATOへの加盟は諦めろ』などと譲歩を迫るのは、理不尽だ。

ウクライナはEUへの加盟を求めている。汚職の撤廃や経済の安定などの条件を満たさねばならず、すぐには無理だろう。

EUには、将来の交渉を前提にした『加盟候補国』とする仕組みがある。EUはウクライナを加盟候補国に認定し、『西側の一員だ』というメッセージを発することが大切だ。

フィンランドやスウェーデンでは、NATO加盟を求める世論が高まっている。欧州各国で『ロシア離れ』が加速しているのは、ロシアの『オウンゴール』と言える」。


適切で分かりやすい論評である。ロシアのウクライナ侵略は欧米との対立は否定できない。そして、欧州、米国はその責任もある。ウクライナへの武器供与を推進しているが、それだけでは、ウクライナも、ロシアも矛は収まらないだろう。
 
ロシアはウクライナとの人道回路や停戦交渉の約束を、ことごとく反故にしてきた。また、歴史を振り返ってみれば、大東亜戦争時に日本との中立条約を一方的に破棄して攻め込み、樺太、しいては満州において、終戦後の昭和20(1945)年8月27日に満洲国吉林省敦化でソ連軍によって連日に渡り集団強姦され続けていた日満パルプ製造(王子製紙子会社)敦化工場の女性社員や家族が集団自決した敦化(とんか)事件などが思い出される。歴史は繰り返されるのである。よって、ロシアを信用してはならない。
今回のウクライナへの民間人の蛮行は、歴史から考えれば、ある程度予想はされたかもしれない。だからと言ってプーチンが行ったロシアの蛮行は許されるべきものでは決してない。ましてや、主権国家を武力で侵略し、一般人までも虐殺されることに憤りを感じる。

ロシア軍の侵略を受けるウクライナのゼレンスキー大統領が3月23日、日本の国会でオンライン演説をした。侵略を続けるロシアに対し、日本の経済制裁の継続を要請。ロシアが「サリンなどの化学兵器を使った攻撃を準備している」と危機感を表明した。また、ロシアの攻撃により国内の原発が危険な状況にあるとも訴えた。
今現在、戦闘下であるにも関わらず、ナショナリズムを煽ることもせず、日本の現状に配慮し、良く考えられた演説だったと思う。事実に即した内容に伴い、日本に対して、アジアで最初に支援したことに対する謝辞、そして日本国内で意見の対立を起こしそうな話もせず、日本には出来ない武器の支援など言わず、今後の支援に対する期待と国際社会やアジアにおけるリーダーシップの発揮など、日本に出来うる可能性の有る事柄などを淡々と静かに話されており、立派な内容だったと思う。そして、色々と世論を煽る言動をするコメンテーターがいるが、客観的に物事を見ていきたいと、自省の意をこめて、そう思う。

今回のこのロシアによるウクライナ侵略をどう見ていくべきなのか。
ハイブリッド戦争や、SNSによる情報戦争、サイバー戦争は、かなり有効な軍事戦略であり、また、核保有は軍事に対し、脅しに効くことが証明された。ドローンや無人機の活用など、以前とは戦い方も変わってきている。昔のままではいかないのである。

岸田文雄首相は4月2日午前の参院予算委員会で、米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する「核共有(ニュークリア・シェアリング)」について「政府として議論することは考えていない」と明言した。「非核三原則を堅持する立場や、原子力の平和利用を規定している原子力基本法をはじめとする法体系からから考えて認めることは難しい」との認識を示した。

自分が良ければすべてよしであるロシア、海洋進出を続け、尖閣を我がものにしようとたくらんでいる腹黒中国、そして、ミサイルをひたすら打ち続け、核をも辞さないと脅している北朝鮮など、何をするかわからない不貞な国々が、我が国を取り巻く安全保障環境に対し、本当にこの首相は日本の安全保障環境をどのように考えているのか、はなはだ疑問であるし、この人に日本の安全を委ねていいものかと疑問すら残る。中国による尖閣奪取も時間の問題だと指摘されているなか、日本の安全保障環境の整備は待ったなしなのである。

4月1日発売の月刊正論5月号に兼原信克元内閣官房副長官補が、国会には核兵器を論じる義務があるとして、「核兵器を抑止するのは核兵器だけ」と記している。今回の「特集『核』を議論せよ」は必読である。
正論編集部が言うように「国民の理解を深めるためにも、賛成であろうが、反対であろうが、タブーを排して『核』を議論すべき」である。そして、自国は自国民で護るという気概を我々は持つべきであるし、「いまこそ『戦後』と決別を」をしなければならない。
2022.04.05 17:55 | 固定リンク | その他
ロシアのウクライナ侵略に思うこと
2022.03.09
ロシアによるウクライナ侵略は日を追うごとに激しさを増している。しかも、軍人だけでなく民間人や民間施設も攻撃し、多大な犠牲者を出している。そして、原子力発電所を攻撃するなど、やることが度を越している。国際法違反であることは誰もが承知であるにも関わらず、誰もプーチン露大統領を止められない。プーチン氏は3日、フランスのマクロン大統領に目的達成まで攻撃はやめないと宣言した。
何故、彼はこうまでしてウクライナを攻撃し、侵略するのであろうか。ここ数年の動向に目を向けてみたい。


令和2年6月の産経新聞によると「米政治外交誌「ナショナル・インタレスト」(電子版)は18日、ロシアのプーチン大統領の論文『第二次世界大戦75年の本当の教訓』を掲載した。『大戦はナチス・ドイツと旧ソ連が引き起こした』との歴史認識を示した欧州議会を批判し、反論する内容。プーチン氏には、ソ連と後継国ロシアが国家の存立基盤としてきた『ファシズムからの解放者・戦勝国』との立場を守るとともに、領土問題を含む戦後秩序を正当化する意図があるとみられる」との記事。
その論文でプーチン氏は「第一次大戦後、欧州はドイツに莫大な賠償金を背負わせナチスの台頭を招いた」と指摘し、英仏を中心に設立された国際連盟はスペイン内戦や日本の中国進出を防げなかったとも述べている。さらに、英仏伊独による38年のミュンヘン会談で、各国がナチスに融和姿勢を取ったことが大戦の「引き金」になったとの認識を示しているものである。また、プーチン氏は「ソ連がドイツと不可侵条約を結んだのは欧州諸国で実質的に最後だった」と主張し、同条約締結は一連の国際情勢の帰結にすぎず、「ソ連を非難するのはアンフェアだ」としている。欧州議会の決議は、ミュンヘン会談に一切触れていないとも批判。その上で41年に始まった独ソ戦に関し、「ソ連は多大な血を流し、ナチスの敗北に決定的な貢献を果たした」と評価。対日戦に関しても「完全に(連合国間の)ヤルタ合意に従ったものだった」としたほか、「連合国が日本の軍国主義を打倒した」とした。
そして、プーチン氏は最後に、大戦後の世界秩序にも言及し、国連安全保障理事会の常任理事国5カ国の努力により、第三次大戦が防がれてきたとの認識を示した。その上で、5カ国が持つ拒否権を廃止すれば国連は無力化すると警告した」との内容だ。


ここで書かれている「欧州議会が示した歴史認識」とは何であろうか。
評論家の江崎道朗氏の著書『日本人が知らない近現代史の虚妄』によると、ベルリンの壁が崩壊した1989年以降、少しずつ自由と独立を取り戻した中・東欧諸国は、ソ連と共産党による戦争犯罪を追及する動きを始め、第二次世界大戦勃発80年に当たる2019年9月19日、欧州連合(EU)の一組織である欧州議会が、「欧州の未来に向けた重要な欧州の記憶」と題する決議を可決した。それは、次のような内容である。
「第二次世界大戦は、前例のないレベルの人的苦痛と欧州諸国の占領とを、その後数十年にわたってもたらしたが、今年はその勃発から80周年にあたる。80年前の8月23日、共産主義のソ連とナチス・ドイツがモロトフ・リッベントロップ協定と呼ばれる不可侵条約を締結し、その秘密議定書で、欧州とこれら2つの全体主義体制に挟まれた独立諸国の領土とを分割して、彼らの権益圏内に組み込み、第二次世界大戦勃発への道を開いた」。
いわゆる、ソ連もまた、「侵略国家だ」と指摘しているのだ。そのソ連を「正義」の側に位置付けた「ニュルンベルク裁判」は間違いだとして事実上、戦勝国史観を修正しているのだ。実際、ソ連は第二次世界大戦中、ヨーロッパ各国を侵略・占領した。決議はこう指摘する。
「ポーランド共和国はまずヒトラーに、また2週間後にはスターリンに侵略されて独立を奪われ、ポーランド国民にとって前例のない悲劇となった。共産主義のソ連は1939年11月30日にフィンランドに対して侵略戦争を開始し、1940年6月にはルーマニアの一部を占領・併合して一切返還せず、独立共和国たるリトアニア、ラトビア、エストニアを併合した」。
ソ連の侵略は戦後も続き、戦時中にソ連に占領されたポーランドやバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)では、知識人の処刑、略奪・暴行などが横行した。
しかも第二次世界大戦後、ソ連に占領された、これらの国々ではソ連の武力を背景に共産党政権が樹立され、ソ連の衛星国にされたが、その責任は追及されてこなかった。よって欧州議会はこう指摘する。
「ナチスの犯罪はニュルンベルク裁判で審査され罰せられたものの、スターリニズムや他の独裁体制の犯罪への認識を高め、教訓的評価を行い、法的調査を行う喫緊の必要性が依然としてある」。
ソ連を「正義」の側と見做した戦勝国史観を見直し、旧ソ連と共産主義体制の責任を追及せよ。こう欧州議会は提案しているのだ。
江崎氏の論考を引用させていただいたが、詳しくは『日本人が知らない近現代史の虚妄』を購入し、熟読していただきたい。


こうした背景の以前には、ソチ冬季五輪後の2014年3月18日、ロシアは2日前にウクライナから分離したばかりのクリミア半島を併合した。プーチン氏は新時代の幕開けを告げるそのスピーチのなかで、数世紀前からのロシアの歴史をたびたび引き合いに出した。
ロシアにおける正教の起源や、ロシア帝国建国の礎となった陸や海での軍事的勝利の話を挙げながら、1990年代以降、ロシア国内で高まった不安について指摘した。ソ連崩壊後、ロシアは自国の利益を守ることに失敗した。プーチン氏の話の中心にあったのが、クリミア半島だった。クリミアは「昔も今もロシアから切り離すことのできない一部だ」とプーチン氏は宣言している。ロシア政府がクリミア半島の編入を決めた背景には「理不尽な歴史的不正」を正したいという思惑があったようだ。その「不正」の先頭に立ったのがボルシェビキである。彼らはロシアが征服した土地を、ソ連の新たな構成国であるウクライナ共和国とした。すると1954年、ソ連の最高指導者のニキータ・フルシチョフはクリミア半島をロシア連邦からウクライナに移管するという運命の決断を下した。そして、1991年にソ連が崩壊すると、ロシア語を母国語とするクリミア半島は、「一袋のジャガイモのように」ウクライナに引き渡されたとプーチン氏は言う。こうしてロシア国家が国境によって分断されてしまったというのがプーチン氏の考えだと。


2016年12月に新潮社から発行された『プーチンの世界「皇帝」になった工作員』(フィオナ・ヒル、クリフォード・G・ガディ共著)によると、「ウラジミール・プーチンは伝統的かつ保守的な信念を持つロシア人政治家であり、世界秩序のなかでロシアが特別な役割を果たしてしかるべきだと信じている。ロシアは唯一無二の歴史、文化、言語を持つ、世界でも類まれな文明大国の一つなのだ」と。そして、「プーチンは、ソ連崩壊後に形成された現在の世界の政治および安全保障は、ロシアの“特別な役割”を否定するだけでなく、主権国家としての存続を脅かすほどロシアを不利な立場に置くものと考えている。そのため、プーチンは現在の秩序を変えることを自らの責務としているのだ」。
プーチン氏はウクライナをはじめとする旧ソ連経済をユーラシア連合に再び取り込もうとしているのは間違いがないことであろうし、この背景には競争力に乏しいロシア製品を売る地域的な市場を確保することで、外部の経済的打撃からロシア経済を守ろうとする緊急の取り組みであったと、前述の著書では指摘している。しかし、その一方でEUは、そのプーチン氏の思惑とは違い、4つの旧ソ連諸国(グルジア、ウクライナ、アルメニア、モルドバ)と独自の協定を結ぼうとしていた。プーチン氏としては、ウクライナが自身の構想の肝だと考えていたから、EUやウクライナと思惑がぶつかったのだ。


「2008年のグルジア戦争、13年~14年のウクライナ戦争までのあらゆる出来事には直接的なつながりがあった。5年という期間を挟んで2つの戦争が起きたことで、そのつながりはなかなか見えにくい。しかし、2つの戦争が起きることは、最初から決まっていた」、と『プーチンの世界「皇帝」になった工作員』には書かれている。そして、プーチン氏は「2008年、ロシアとウクライナが死活的利益を共有することを明言した。ウクライナとNATOが正式な関係を結ぼうとしただけでも、それはロシアにとって直接の脅威となる、と。08年4月のNATOブカレスト・サミットでジョージ・W・ブッシュ米大統領がウクライナ問題について話し合おうとすると、プーチンは冷たくこう言い放ったという。「ジョージ、君は分かっていないね。ウクライナは国家でさえない。では何なのか?その領土の一部は東欧に属しているが、大部分はわれわれからの贈り物なのだ」と。


色々な思惑と歴史が深く絡み合う中で起きたロシアのウクライナ侵略。最近のテレビ報道で、橋下徹氏の言動が物議を醸しだしている。
橋下氏は3月3日、フジテレビ朝の情報番組『めざまし8』に生出演した際に、ロシアに侵攻されたウクライナに住むすべての人々に対して「国外退避すべきだ」と持論を展開。同番組に一緒に出演したウクライナ出身で日本在住の政治学者であるグレンコ・アンドリー氏との会話の中で、具体的には以下のように述べた。
「祖国防衛のために命を落とすことが一択になるということが、僕は違うと思うんですね。いまウクライナの方々が命を賭けて戦っていることには本当に敬意を表しますけども、本当にそれだけなのか。一旦、日本に逃げておいでよと。日本がかつて太平洋戦争でそういう時があったわけじゃないですか。僕はもう少しずる賢く考えれば、プーチン大統領だってどこまで生きるんですか。今70ですよ、あと30年も生きられませんよ。西側諸国がロシアの経済制裁をやってるって言うんだったら、ロシアの瓦解を狙っているって言うんだったら、ロシアが瓦解するまで国外で退避したっていいじゃないですか。祖国防衛、そこで命を落とす、それしかないという状況にみんななってしまうと、国外退避することが恥ずかしいことだ、それやっちゃいけないことだ、売国奴だという批判を恐れてしまうような空気、僕はおかしいと思う」
「アンドリューさん、日本で生活してて良いんでしょう。未来が見えるじゃないですか。あと10年、20年(国外で)頑張りましょうよ。そこからウクライナ立て直したっていいじゃないですか、プーチンだっていつか死ぬんですから。(ウクライナ国民を)どんどん国外退避さしたらいいんですよ、だって西側諸国は武器しか供与しないんですから」
橋下氏は、全ウクライナ国民を10年から20年ほど国外に退避させて、その後に国へ帰ってからウクライナを再建したらいいと発言したのだ。この発言は全くもって同意できない。共産主義国の中国は毛沢東が亡くなっても、日本に対する圧力を決して弱めておらず、かえって世界の脅威になっている。そして、2049年には世界を征服しようと目論んでいるのだ。
この橋下氏の発言に対してアンドリュー氏は番組内で以下のように反論した。
「仮に100万人が逃げても4000万人が(ウクライナから)逃げられません。ロシアに支配されたら必ず殺戮が起こります。それはロシアという国の本質なんです。彼(プーチン)はいずれ死ぬとおっしゃいますけど、彼は70歳で元気ですよ。あと20年生きるかもしれません、その20年の間にウクライナ全土に何をするかわからないし、もし彼のウクライナ支配が確立した場合、次に似たような指導者が出てきたらそれ(支配)が続くんです。独立性を失った状態は長引くかもしれないんです」。


靖国問題、安全保障に関する考え方など、橋下氏は近現代史の歴史観が全くもって理解していないと思うのは私だけではないはず。故石原慎太郎氏も橋下氏と袂を分かった際に、この問題を指摘していた。ここ数年のロシアとウクライナの歴史を振り返っても一筋縄ではいっていないのに、祖国を守る考え方を捨て、相手に屈するなど、橋下氏の考え方を、私は到底受け入れられない。
日本は、北朝鮮による弾道ミサイル発射や、北方領土ではロシアに、竹島では韓国による実効支配に陥っている。さらには、中国における尖閣諸島、沖縄をめぐる領土問題において、予断を許さない状況が続いており、日本を取り巻く安全保障環境は一段と厳しさを増している。にもかかわらず、岸田首相の国会発言をはじめ、我々国民も含め、日本の平和ボケは度を増している。世界では戦争が勃発しているにもかかわらず、である。日本は祖国を守るために、憲法改正、自衛隊予算の増強、核開発議論におけるまで実態を変えなくては、国がもたないところまで来ている、日本が日本でなくなってしまう恐れがあるという危機感を感じてならない。今までとは異なる環境と実態であることに目を背けてはならないのだ。


櫻井よしこ氏は、産経新聞の連載「美しき勁き国へ」に「国守る意志を持て」とのテーマで以下のように記している。一部抜粋し紹介する。

「冷戦終結から約30年、私たちはいま初めて、核の使用をいとわない専制独裁者の出現に直面し、あってはならない現実に驚愕している。同時に私たちはプーチン氏に立ち向かう鮮烈な指導者の出現を得た。ウクライナのゼレンスキー大統領だ。氏は米国が亡命の手段を申し出たのに対し、「必要なのは武器だ。乗り物ではない」と拒否した。米国と北大西洋条約機構(NATO)にウクライナ上空への飛行禁止区域設定を要請し拒否されると、ならばもっと武器や戦闘機を送れと要求した。
戦い抜く姿勢は1ミリも揺らいでいない。命懸けだ。国と運命を共にする覚悟を世界に示した。人々の心に、あるべきリーダー像を深く刻みこんだ。リーダーとは戦うものだ。国を愛するとは命を懸けて守ることだと示した。21世紀に引き起こされた異常な戦争にどう立ち向かうかをゼレンスキー氏の決断が示している。プーチン氏の悪魔の核の脅しに立ち向かうには、戦うしかないのだと告げている。
これこそ、日本人が心に刻むべき姿であろう。国を守ることは、こういうことだったと、思い出すべきだろう。日本は敗戦後、戦うことを忘れた。祖国は自らが守るものだという国家としての原点を捨て去り、米国に守られるのを当然視してきた。そんなだらしのない国を、世界は生きのびさせてはくれまい」。

戦争を擁護するわけではないし、もちろん戦争はあってはならないとする立場であるが、今回、ウクライナ国民の祖国を守る態度に、感動を覚えるとともに、明日は我が身であると思い知らされた。
歴史は繰り返す。過去の歴史を正しく認識、理解することは必至であり、過去から学び、そして、日本国を守るために我々は何をしなくてはならないかを今一度考えていく必要があることに声を大にして言いたい。そして、批判を恐れず行動に移すべきであり、そういう仲間を増やす必要があると心から思った次第である。
2022.03.09 11:33 | 固定リンク | その他
令和4(2022)年はどんな年か
2022.01.04
新年おめでとうございます。
昨年中は私のこのブログにお付き合いいただきまして、ありがとうございました。心より感謝申し上げます。

昨年は、1月に「玉川博一事務所」を立ち上げ、本格的に「玉川習字教室」と「寺子屋『玉川未来塾』」をスタートさせた多忙な一年であった。コロナ禍ということもあり、特にイベント事業は思うような成果を挙げることはできなかったが、今年は安定した事業展開を図るためにも、結果を重視していきたいと思っている。

さて、令和4(2022)年はどんな年か。
暦でいうと「五黄土星中宮」、十干十二支でいうと「壬寅」年である。
私は、五行陰陽説を勉強していることもあり、その視点から今年はどんな年になるかをみていきたいと思う。

まず、その前提として、五行とは。
古代中国に端を発する自然哲学の思想で、万物は火・水・木・金・土の5種類の元素からなるという説。また、5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考えが根底に存在するというものだというものである。
そして、それらには「陰」と「陽」があるというのが、五行陰陽説だ。
例えば、細木数子の六星占術に天王星人「+」と「-」、また、ゲッターズ飯田の五星三心占いの「金」と「銀」はその類になる。

このことを頭に入れてから、読み進めていただきたいと思う。

「五黄土星」は「土の性」。「土」は植物の芽が地中から発芽する様子が元となっていて、万物を育成・保護する性質を表す。「季節の変わり目(春夏秋冬の土用)」の象徴である。

「壬(みずのえ)」。「壬」の文字の意味は「妊に通じ、陽気を下に姙」、厳冬を耐えて内に蓄えた陽気で次代の礎となること。土の下で芽が膨んで土がぐんと盛り上がっている様子、もしくは生き物が子孫を残すための繁殖期をイメージすると理解しやすいと思う。そして、五行でいう「水の陽」の因子を持つ。「水」は静寂、堅守、停滞、冬の象徴、「陽」は激しいとか大きいといった意味があるので、「壬」は、厳冬、静謐、沈滞といったことを表す。

「寅」は十二支の3番目で、生命の循環で言えば初めの位置に近く、誕生を表す。「寅」の文字の意味は「蟺(ミミズ)に通じ、春の発芽の状態」、豊穣を助けるミミズが土の中で動き、芽吹きが始まった状態。暖かくなって虫たちが動き出し、春の胎動を感じさせるイメージで、陰陽五行説では「木の陽」に分類される。五行の「木」は成長、発育、誕生、春の象徴。つまり「寅」は、強く大きく成長するといったことを表す。

そして、五行では関係性によって、お互いを打ち消し合ったり、強め合ったりといったことが起きる。「壬」と「寅」の関係は、「水生木」の「相生」と呼ばれる組み合わせである。これは、木は水によって養われ、水が無ければ木は枯れてしまう。つまり「壬」が「寅」を補完し強化する関係となる。
よって、これらを合わせ考えると、陰陽五行説から見た2022年の干支「壬寅」は、「陽気を孕み、春の胎動を助く」、冬が厳しいほど春の芽吹きは生命力に溢れ、華々しく生まれることを表しているという年と予測される。

しかし、五黄土星は「土の性」。「壬」の「水」も「寅」の「木」も、相手を打ち滅ぼしていく「陰」の関係でそれを「相克」という。
「木剋土」と呼ばれる関係は、木は根を地中に張って土を締め付け、養分を吸い取って土地を痩せさせる意味があり、「土剋水」と呼ばれる関係は、土は水を濁す、また、土は水を吸い取り、常にあふれようとする水を堤防や土塁等でせき止める意味がある。
しかし、相剋の中にも「相生」がある。例えば、土は木の根が張ることでその流出を防ぐことができ、水は土に流れを抑えられることで、谷や川の形を保つことができるといったことである。

先程、「『陽気を孕み、春の胎動を助く』、冬が厳しいほど春の芽吹きは生命力に溢れ、華々しく生まれることを表しているという年」と言ったが、突っ走るのではなく、時には抑える力も必要であり、根を張る動き、地道な動きも大切となる。よって、総合的に「壬寅」年は、春の胎動が大きく花開くために、地道な自分磨きを行い、実力を養う必要があるといったことも指し示すので、慎重を期すことも必要な年ともいえるであろう。

私はゲッターズ飯田によると「金の時計座」で、今年は「ブレーキの年」だ。「ブレーキの年」とは、「前半は攻め、後半は守り」と入れ替わる年だそうなので、前半は行動力と決断力を、後半は現状維持を大事にしていき、そして、自分磨きに自力を蓄えていこうと思う。

以上、一部、ネットでの情報が分かりやすかったので、引用させていただいてはいるが、これは、あらゆる考え方のひとつであるので、参考にしていただけたら幸いである。

さて、これらを踏まえて、「壬寅」年の今年の日本はどのような方向に動いていくのか。
各社元日の社説がその方向性を見出しているが、産経新聞の乾正人論説委員長は「さらば『おめでたい憲法よ』」と題して、世界は、米国を中心とした「民主主義国家」と中露を主軸とした「強権国家」が対峙する新たな冷戦時代に突入したと論じ、「今年こそ真剣に憲法改正を論議しなければならない」と訴えていた。私はこの考え方とほぼ同じである。
他はネットでもアップされているので、そちらを参考にしてもらいたい。

私は、以下の3点を今年の重要ポイントとして見立てている。
①安全保障
②経済
③憲法改正

詳細については、後日、各重要ポイントを論じていきたいと思う。
「台湾有事は日本有事」とする見方は当たっているが、私の知る台湾の友人は「台湾より日本の方が心配だ」と言う。蔡英文政権に対する信頼度は高く、台湾人のアイデンティティは日本人より高いと言う。むしろ、日本の外交姿勢、若者の歴史観・国家観はいかがなものかというのが率直な思いだというのである。

私は、「安全保障」「経済」「憲法改正」において、その根幹には日本人としての正しい歴史観・国家観が国民の心の奥深くに、どのように存在しているかかが重要だと考えている。
そういった観点から、今年は、寺子屋「玉川未来塾」として以下の柱で事業を展開しようと思う。
①正しい歴史認識の確立
②経済と安全保障
③安全保障と憲法改正
イベントなどの開催の際には皆様にもご案内していきたい。

そして、最後に。
本年も私の胸の内を吐露し、イベントの企画運営や勉強会のテーマとして行動に移すことで、「思いを形に」していきたいと思うので、引き続きお付き合いくださいますよう、お願い申し上げる次第である。
2022.01.04 16:52 | 固定リンク | その他
歴史戦に勝つために
2021.12.02
去る令和3年11月29日、櫻井よしこ氏が理事長を務める公益財団法人 国家基本問題研究所の「歴史問題国際広報研究会」が政府に対し、以下の内容で政策提言をした。

とても重要な内容なので、URLを記載するので、ぜひ、ご覧いただきたい。
https://jinf.jp/news/archives/36116


私が、「寺子屋『玉川未来塾』」を立ち上げの際に思ったことであるが、改めて思う。

戦後、我が国は世界でも類を見ないほどの未曽有の経済発展を遂げ、世界第三位の経済大国となりました。そこには大東亜戦争を経験した大正生まれの世代が、命を賭して戦った英霊の思いを継ぎ、日本復興へとすべての力を注いだ故、我々は物質的・経済的な豊かさを手に入れました。

しかし、一方では祖先から引き継がれてきた日本独特の道徳心や精神的な豊かさは置き去りにされ、戦前の日本を全否定し、過去の良き日本の精神までもが、日本を封じ込めようとする様々な動きで失われようとしています。また、悪の個人主義がはびこり、平気で子を殺める親など凶悪の犯罪事件の数々、迷惑を顧みず、社会のルールを破っても平気で、しかも、自分のことしか考えない、倫理観・道徳心が欠如した者たちも増えている現状に心を痛める次第です。

日本は戦前教育を悪としたGHQの戦後政策(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)により、良き日本を封印または否定し、国民に自虐史観いわゆる「東京裁判史観」を植え付け、そして間違った歴史観・国家観をマスコミ、教育を通じて日本国民に根強く落とし込んできたことにより、日本の根幹を揺るがそうとしている事態が生じているといっても過言ではありません。
こうした状況を打開するため、日本社会における次世代のリーダーとして、日本における正しい歴史観・国家観を持った次代を担う人材を育成するべく寺子屋「玉川未来塾」を立ち上げました。産経新聞社正論調査室在職時代に手掛けた「大東亜戦争を語り継ぐ会」などのイベント通じて培ってきたノウハウを活かし、勉強会や講演会、シンポジウム、セミナーなどの事業を通じて、現代の日本人が忘れている良き日本を取り戻していきたいと思う次第です。

日本国は現在生きている私たちだけのものではありません。過去と未来の日本人のものであると思います。寺子屋「玉川未来塾」の活動を通じて良き日本を取り戻し、次世代のリーダー、次代を担う若者たちの育成、正しい歴史観・国家観を継承していくために活動してまいります。

私は、産経新聞勤務時代、約10年ちょっと、歴史戦の最前線に立っていた「雑誌『正論』」の発行部署で勤務していたが、「歴史戦」の重要性、「正しい歴史認識の大切さ」を、肌で感じていた。
産経新聞が歴史戦を展開し、それが今では月刊正論でも展開しているが、世には歴史の真実に刷り込まれたプロパガンダが、あたかも歴史の事実であるかのように拡散され、そして、それを信じている国民があまりにも多いことに驚愕するとともに、私の周囲にいる、一般的な人々は、まさにそのど真ん中にいる。重ねて言うなれば、刷り込まれたプロパガンダを信じている者が多いということである。もっと、産経新聞、月刊正論で展開している「歴史戦」を多くの方々に知っていただきたい、読んでいただきたいと心から思うのである。
私は、その事実を目の当たりにし、愕然とする中、このままでは何も変わらないとの思いから、来年度は「寺子屋『玉川未来塾』」主催で、この「歴史戦」をテーマに展開するイベントを開催する。その時は大物ゲストにご登場いただこうと思っている。

また、新たに旅行事業に着手する。
来年度の事業企画を色々と考えていたのだが、「思いを形に」を「旅行ツアー」という形にしようと考えた。
このことを、旅行会社の社長さんに相談したところ、私の企画に全面的にご協力を戴けることとなった。心から感謝申し上げる。
とは言っても、旅行事業の免許は持っていないので、私はツアー企画の案をご提供するだけ。その実働に対して、対価をいただくといった形である。

今、考えているのは以下の2点。
①特攻隊が遺したもの~私達の知らない歴史の真実と特攻基地巡り
②お伊勢参り~神様と皇室を戴く意義

これらの旅行は、色んな旅行会社が企画しツアーを組んでいるが、それらとはまた違った、「寺子屋『玉川未来塾』」でしか味わえない企画を取り入れる。

鹿児島には知覧をはじめ、万世、鹿屋に特攻基地があった。そして、現地には、まだ、私たちが知らない歴史の真実がある。そこから飛び立った特攻隊員達の思いを改めて感じるとともに、現地の方のご協力を得、平和祈念館だけでなく、ホタル館富屋食堂や霧島神宮にも行きたいと思っている。

また、お伊勢参りは、先般、伊勢神宮に参拝した際に、ご案内いただいた現地の方のご協力を全面的にいただくこととなった。そして、現地でしか味わえないことなどのご案内をお願いするとともに、日本人として神様、皇室を戴く意義と伊勢神宮のパワーや心穏やかな静寂な環境をご提供したいと思う。

これらは色んな方々のご協力があってできるもので、私にご協力をいただける皆様には心から感謝申し上げる次第である。本当にありがとうございます。

まだ、私達が知らない、歴史の本当の真実をお伝えしたい。心からそう思うのである。
歴史の真実を正しく理解し、そして、学びを深めることはとても大切である。しかし、その自分に満足しては自己満足で終わってしまう、そんな現状は打開したいとの思いは、会社を辞めてさらに実感している。
会社にいた時ではできなかったことを、そして、今後も学びを深め、そこから自分自身が、「何ができるか」を模索し、実際に行動に移して参りたいと思う次第である。
2021.12.02 07:22 | 固定リンク | その他
拉致被害者奪還のために
2021.11.18
去る、11月15日。昭和52年に横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されてから44年が経過した。
地村保志さん夫妻・蓮池薫さん夫妻・曽我ひとみさんの5人の拉致被害者が帰国したのは平成14年のことで20年弱の年月が経過している。しかし、政府は拉致問題を「最優先課題」としながら、5人の拉致被害者が帰国してから20年近く、ひとりの帰国も実現できていない。すなわち、拉致問題は現在進行形の問題なのである。

北朝鮮による拉致被害者の早期救出を求めて、今年も11月13日、「国民大集会」が実施された。田口八重子さんの兄で、家族会代表の飯塚繁雄さんは、集会の冒頭で「われわれは諦めるわけにはいかない。なにがなんでも解決するという思いを今回、特にブルーリボンバッジにあてた。バッジとともに、皆で勢いをつけていきたい」と語った。
ブルーリボンは、北朝鮮にいる拉致被害者と家族を結ぶ「青い空」と、日本と北朝鮮を隔てる「日本海の青」をイメージしたもので、被害者の生存と救出を信じる意思表示として広く着用されているもの。
今回の集会では、ブルーリボンに関し、12月10~16日の北朝鮮人権侵害問題啓発週間中、全ての閣僚や国会議員、地方議員らのほか、多くの国民に着用を要望。初めて決議項目に盛り込んだとされている。田口さんの長男、飯塚耕一郎さんは「ブルーリボンバッジを着けていると『これは何ですか』と聞かれることがある。まだ拉致への理解が浸透していないことを実感する」と率直な思いを明かす。
決議文では、「親の世代が被害者と抱き合うことなしには、日本の怒りは解けず、支援はあり得ないことを、北朝鮮の最高指導者に伝えることが、今大切だ」と記した。親世代を中心に高齢化が進み一刻の猶予もない現状で、日本が〝一枚岩〟となる必要性は増している。
めぐみさんの母、早紀江さんはこの日のあいさつで、「娘を13年間しか育ててあげられなかったことは本当に悔しい」と、母親としての悲痛な思いを吐露。「心が結集すれば日本は変わっていく」とし、国民一丸となっての取り組みに期待感を示した。前回(昨年10月)の国民大集会では、同じ日に、めぐみさんの父、滋さんのお別れ会が催された。この1年、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、拉致問題はこれまで以上に停滞。家族の間には、「風化」への懸念が高まった。めぐみさんの弟の拓也さんは「あっという間の1年だったが、何も前進していない。いらだちが本音だ」。そして、「自分の家族が被害者だったらどうか。拉致を我がことと捉えてほしい」と改めて国民の理解と協力を求めた。
 
私は、1日も早い帰国を祈念しつつ、来年の2/23(水・祝)に、私の私塾「寺子屋『玉川未来塾』」主催で、映画「めぐみへの誓い」上映&トークライブを開催することとした。

北朝鮮による拉致事件を題材にした映画『めぐみへの誓い』の制作発表記者会見が令和2年2月13日、参議院議員会館で行われた。今年、その映画が上映され、多くの国民が観たことであろう。
映画の原作は「めぐみへの誓い-奪還-」という演劇。横田めぐみさんが拉致されてから2年、「北朝鮮拉致事件」をテーマにした日本映画が一本も存在しない事から企画がスタート。拉致の残酷さと実態、拉致被害者救出を世界に訴えることを目的として、昨年7月にクラウドファンディングを実施。現在までで支援参加者3,500人以上、支援総額4,850万円を超えるなど多くの方の賛同と共感を得て「本格的な映画製作」が実現することになり、3月にクランクイン、そして劇場公開となった。
監督・脚本の野伏翔氏は長い間、この問題に取り組み、向き合い、そして舞台「めぐみへの誓い-奪還-」を全国公演しては拉致被害者を救うべく啓蒙活動を行っている。そして、その時の記者会見で野伏監督は「(横田さんが)元気なうちに何とかしたいという思いがある。横田さんは、いつも電話を掛けると『はいっ!』とすぐに出てくるんです。いつ、めぐみさんが帰ってくるのかと期待して…」と声を震わせながら作品に掛ける思いを語った。監督の思いは我々の想像以上に深いのである。
そんな中、拉致被害者、有本恵子さんの母、有本嘉代子さんが逝去され、横田滋さんも令和2年6月5日に亡くなられた。被害者家族のことを思うと悲しみ深く、残念でならない。

10月2日付産経新聞で横田早紀江さんは「めぐみへの手紙」で以下のように綴っている。

北朝鮮は一筋縄ではいかない、手ごわい相手であることは重々、承知しています。でも最後は、最高指導者に被害者全員を返す決断を求め、それこそが世界の平和を導く術だと、心の底から理解してもらわなければなりません。
私たちはこれまで、日本の首相が代わるたび顔を合わせ、即時解決への訴えを重ねてきました。お父さんも家族会代表として救出運動の最前線に立ち、全国を飛び回りました。体を病み入院しても、あなたと抱き合うため、病床で必死に命の炎を燃やしました。再会の思いを果たせず、天に召されたお父さん、多くの被害者家族、そして支援者の皆さん。託された奪還の願いを実現するまで、お母さんたちは倒れるわけにはいきません。
日本では近く、大切な選挙が行われます。政治家の皆さま。遠く離れた異国の暗闇で、救いを待つ子供たちを思ってください。命の問題である拉致事件を、党派を問わず真心から議論してください。知恵を絞り、一日も早く、解決への歩みを進めてください。
新たなリーダーには、残された時間の少なさを直視し、具体的な動きにつなげていただくことを願ってやみません。拉致問題はまさに、「正念場」です。国民の皆さまもどうか拉致事件を己のこととして感じ、それに向き合う政治のありようを凝視し、解決を後押ししてください。
19年前の9月17日。無事を信じて、自宅に置いためぐみちゃんの写真に「早く帰っておいで」と声をかけました。思いはかなわず、想像を絶する長い闘いになってしまいましたが、タラップから下りてくるあなたと、笑顔で抱擁できる日が必ずやってきます。
めぐみちゃん、あともう少し、待っていてね。お母さんは最後の力をふり絞って、闘いを続けます。

涙で「めぐみへの手紙」が読めなくなった。

今朝まで元気で学校に向かっていった我が子が、突然、消息不明となり、家に帰ってこない状態を想像してみてほしい。その家族は本当に平和状態だと言えますか。戦争がない状態だけが平和な状態なのか。他国に連れ去られた拉致被害者を救えないでどうして平和だと言えるのか。そして、国民はこの問題を我がことのように捉えているのだろうか。すでに、この拉致事件を知らない世代も多く、風化していく恐れもあるのが現状です。
一方で、こういった難解な問題を真剣に考えた千葉県八街市立朝陽小学校の5年生が令和元年、産経新聞東京本社を訪れ、「横田めぐみさんへ」と題した75人分の作文を届けてくれた。作文には、被害者の帰国を強く願う思いが綴られており、小学生を指導した先生と真剣にこの問題に取り組んだ小学生に敬意を表したい。
子供を殺める親、平気であおり運転をする者、「皆がしているから自分も」と迷惑を顧みず、事の真意を考えないで行動する者など、不道徳なニュースが毎日報道される。個人の主張だけが尊重され、公の問題は無関心。本当に考えさせられる。日本は確かに豊かになった。しかし、日本人として大切な何かを失っている気がしてならない昨今である。

今回、寺子屋「玉川未来塾」で開催する「映画『めぐみへの誓い』上映&トークライブ」では、長年、この拉致問題に関わってきた、ジャーナリストの葛城奈海さんや、監督の野伏翔監督らにご登壇いただき、お話をお聞きしたいと思う。
皆さんには、本映画「めぐみへの誓い」を通じ、この問題に長い間、取り組み、向かい合ってこられた野伏翔監督の思いや、横田めぐみさん役の菜月氏、横田早紀江さん役の石村とも子氏らがトークライブを通じて話す、拉致の残酷さと実態を感じて欲しい。そして、このイベントが拉致問題解決に向けて、我がこととして捉えるきっかけとなり、拉致問題早期解決に向けて、国民の声が高まり、その一助になればこんなに嬉しいことはない。
2021.11.18 07:27 | 固定リンク | その他

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