我々は皇室のことを本当にわかっているのだろうか
2021.03.18
3月18日付の産経新聞主張欄に「皇位継承の会議 正統守る安定策の検討を」と題した社説が掲載されました。「政府が、安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議を設置した。来週初会合を開く」とし、「安定的な皇位継承の維持は、国家の基本に関わる重要な事柄だ。『日本国の象徴であり日本国民統合の象徴』である天皇が永続する方策を講じる必要がある」と論じています。
我が国は2600年余、126代にわたる皇統の歴史は、お一方の例外もなく初代神武天皇に繋がる男系血統で紡がれてきました。悠仁親王殿下と同世代の男性皇族がいないからと、安易に女系天皇や、それに繋がる女性宮家を認めることは、国体の破壊を意味すると私は確信します。そして、この万世一系を守らなければ、日本が日本でなくなると言っても過言ではありません。ましてや皇位継承問題をジェンダー論で語るべきではありません。
しかし、「女系天皇」「女性天皇」の違いを理解している国民は6%しかおらず、他94%の国民は女系天皇の意味さえ良く分からないといった状況であると、NHKの世論調査で明らかになりました。
平成29年5月25日、「正論SPvol.2『天皇との絆が実感できる100の視座』」が発行されました。「第一章『天皇のご存在はなぜ尊いのか』」の冒頭に、以下の記載がありますので、引用します。
「はじめに天皇はなぜ尊いのか、というテーマから考えましょう。学校でも天皇というご存在の意義や『なぜ私たちは天皇を戴いてきたのか』といったことが語られる機会は少ないと思いますがそれはなぜでしょう。
天皇を肯定的に語ると即、右翼か軍国主義者呼ばわりされてしまうのではないか、そういう空気が存在してきたのは確かな話で、今もそれは存在します。口にするのをなんとなく憚る、そんな空気に慣れるうちに、知っておかなければならないことまでもが語られなくなったように思えます。多くの場合、語りたくないのではなく、語る言葉を持ち合わせていおらず、より状況は深刻だと思うのです。
天皇というご存在は私たち日本人にとってかけがえのないものです。その実像を知ることから本章は始めましょう」。
実は、もしかしたら私たちは、皇位継承問題をはじめ、皇室のことも何も知らない、わかっていないのかもしれません。そういう意味でも、今回、「天皇・皇室の基礎知識」をはじめ、「女系天皇」「女性天皇」の違い、何故男系一系でなければいけないのか、国民が誤解している皇室など、安定的皇位継承のため、「天皇を中心とする日本の歴史・文化・伝統を守ること」を、正しく理解していただく機会として、皇位継承問題講演会を以下の通り開催いたします。
第一回 寺子屋「玉川未来塾」公開講座
「万世一系の皇室を仰ぐ~誤解を解こう皇位継承問題~」講演会
【日 時】令和3年4月29日(木・祝)
13時00分 受付開始、開場
13時30分 本殿正式参拝
14時00分 講演「万世一系の皇室を仰ぐ」(講師:三荻祥氏・ジャーナリスト)
※講演のみ、ライブ配信を実施。
15時00分 閉会予定
※混雑状況によっては、受付時間を早めることも考えております。あらかじめご了承ください。
【会 場】石神井氷川神社 儀式殿(練馬区石神井台1-18-24)
【アクセス】西武池袋線石神井公園駅下車
石神井公園駅より徒歩16分、石神井公園駅よりバスに乗車、JA東京あおば下車・徒歩7分
西武新宿線上石神井駅下車
上石神井駅より徒歩15分、上石神井駅よりバスに乗車、あたご橋下車・徒歩9分
http://www.ne.jp/asahi/hikawajinja/hikawahp/access.html
【定 員】50名(先着順、定員になり次第締め切り)
【入 場 料】事前申込3,000円、当日受付3,500円(ともに税込み)※玉串料含む
ライブ配信申込1,500円(税込み)
【その他】会場来場者には「正論SPvol.2『天皇との絆が実感できる100の視座』」をプレゼント
【主 催】寺子屋「玉川未来塾」
詳細他、お申し込みは以下のURLをクリックしてください。(別ウインドウまたは別タブで開きます)
https://kokucheese.com/event/index/609552/
当日はツイキャスにてライブ配信も行います。会場に来れない方、ライブ配信での観覧をご希望の方は以下のURLをクリックしてください。
https://twitcasting.tv/f:3545491502230010/shopcart/61696
当日はソーシャルディスタンスを保ち運営してまいります。
席数も定員100名のところ上限50名とさせていただきますので、50名になりましたら受付終了となりますことご了承ください。
また、皇位継承問題をより深く理解していただきたいので、当日、会場にお越しいただきました来場者には「正論SPvol.2『天皇との絆が実感できる100の視座』」をプレゼントいたします。
皆様からのお申し込みを心よりお待ち申し上げます。そして、皇室のこと、皇位継承問題をのことを正しく理解していきたいと思います。
講師:三荻 祥(みつおぎ さき)
【プロフィール】
昭和59年香川県生まれ。平成19年長崎大学を卒業後、日本青年協議会の職員として大学生の育成、月刊誌『祖国と青年』の編集に携わる。上皇上皇后両陛下、天皇皇后両陛下の行幸啓地への取材のほか、神道政治連盟首席政策委員・田尾憲男氏の下で戦後の皇室制度・皇室法についての研究を行う。
第26回産経新聞社主催「土光杯全日本青年弁論大会」で最優秀賞土光杯受賞。第5回「真の近現代史観懸賞論文」佳作入賞。
共著『天皇陛下がわが町に』『沖縄戦跡・慰霊碑を巡る』(ともに明成社)、論文『平成の世に生きる若者にとって皇室とは』(別冊「正論」vol.14)、『天皇陛下についてもっと知ろう』(月刊「正論」2019年12月号)など。
映画「めぐみへの誓い」を観て思う
2021.03.07
本日は、映画「めぐみへの誓い」を観てきた。
・・・胸が締め付けられた。
拉致被害者をも取り戻せない日本の安全保障って何だろう。それでいて平和な日本って一体何?改めてそう思った。
この映画の原作は「めぐみへの誓い-奪還-」という演劇で、昭和52(1977)年に横田めぐみさんが拉致されてから「北朝鮮拉致事件」をテーマにした日本映画がいまだ一本も存在しない事から企画がスタート。拉致の残酷さと実態、拉致被害者救出を世界に訴えることを目的として、クラウドファンディングを実施され、多くの方の賛同と共感を得て「本格的な映画製作」が実現することになり、この度、劇場公開された。
監督・脚本の野伏翔氏は長い間、この問題に取り組み、向き合い、そして舞台「めぐみへの誓い-奪還-」を全国公演しては拉致被害者を救うべく啓蒙活動を行ってきた。そして、当時の記者会見で野伏監督は「(横田さんが)元気なうちに何とかしたいという思いがある。横田さんは、いつも電話を掛けると『はいっ!』とすぐに出てくるんです。いつ、めぐみさんが帰ってくるのかと期待して…」と声を震わせながら作品に掛ける思いを語った。監督の思いは我々の想像以上に深いのである。
令和2年2月3日付の産経新聞「めぐみへの手紙」で横田早紀江さんは「お母さんは今、一生懸命に毎日を生きています。体中に衰えを感じ、日々しんどく感じます。そして、病院で必死にリハビリするお父さんの姿を見ると、『一刻も早く、めぐみと会わせてあげなければ』という焦りで全身がしびれます。これが老いの現実です。お父さんと、お母さんだけではありません。すべての家族が老い、病み、疲れ果てながら、それでも、被害者に祖国の土を踏ませ、抱き合いたいと願い、命の炎を燃やしているのです」と綴っていた。
しかし、令和2年6月5日、横田滋さんはお亡くなりになった。享年87。残酷極まりない。
私が販売兼事業担当部長として正論シネマサロンを担当していた平成29(2017)年10月に第9回正論シネマサロン「舞台版『めぐみへの誓い』」を上映した。拉致から40年の節目の年に開催しましたが、当時は北朝鮮からのミサイルが頻繁に発射され、「こういう時期にこのイベントをするのはどうなのか」という声をいたが、私は事業担当部長として、「こういった時期だからこそ、開催し訴えるべきだ」と声高に言ったことを思い出す。
この問題。「捏造」「虚報」とまで揶揄された一本の記事からすべてが始まった。産経新聞元記者阿部正美氏。この記者がいなければ、この事件は国内失踪事案のまま闇の中だったかもしれない。産経新聞の第一報は「虚報」とされ、この重大な人権侵害、主権侵害の国家犯罪への関心は広がることはなかった。
阿部正美氏著『メディアは死んでいた』で、阿部氏は以下の思いを綴っている。
「歴史に『もし』『たら』はないが、もし、あの時、メディアが一斉に報じていたら、今とは違う、今よりずっと良い結果に至っていたのではないか、との思がぬぐえない。一度ならずあった契機に目をつぶり、拉致疑惑の存在を否定、黙殺し続けた事実は消すことはできない。この間、産経新聞の一連の拉致報道に対する誹謗を幾度も見聞した。インターネット上にも事実と異なる情報が散見される。反論もせず、訂正を求めることもしてこなかった。通常、事件取材の経緯は明かさないのが原則だ。しかし、拉致事件に限れば、どう取材したか、しなかったか、どう報道したか、しなかったか、が正しく記憶されるべきだと思うようになった。それらを全て含めて拉致事件と考えるからだ。(中略)北朝鮮が拉致を認め、謝罪したにもかかわらず、全面解決の兆しは見えない。事件が風化しつつある今、私なりの40年目の検証を書き残すことが、老いた元新聞記者にできる最期の仕事ではないか」。
さらに阿部氏は、メディアに携わる人間としての反省もあるとして、前述の第9回正論シネマサロンのトークライブで「拉致を放置したメディアの罪―今だから語る取材秘話」の中で次のように語っている。
「昭和63年に梶山静六国家公安委員長(当時)が初めて『北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚』と国会で答弁した際、産経新聞の扱いはベタ記事でした。これだけのことを政府が明言する背景にはそれなりの根拠があるんですよ。普通はその根拠をめぐって取材合戦が始まり、新しい事実が出てくる。そして世論が盛り上がる。梶山答弁を大きく扱っていれば拉致問題解決は早まったのではないかという思いが消えません。一行も載っていなかった他紙に比べればましだったとはいえ、梶山答弁の重要性を見逃した自分が実に恥ずかしいですよ。めぐみちゃんの事件が明るみに出たのは1997年。『アベック三組』の記事から17年も経っていることがこの事件の異様さを示しています。その責の大半はメディアにあります。金丸訪朝団は北朝鮮で拉致の『拉』の字も言いませんでしたが、それはマスコミの訪朝団も同じでした。だからメディアに『政府は何もしなかった』と批判する資格はない。梶山答弁を見過ごした私にもありません。
(梶山答弁を引き出したのは共産党の国会議員でした。質問の作成に関与していたのが後に除名される兵本達吉氏です)。当時、共産党の国会議員秘書を務めていた兵本さんから電話があり、『あんたが書いたアベックの記事はおもろいな。清張の小説よりおもろいで』と言われました。産経と共産党は犬猿の仲だったから、電話を受けた私はびっくりしました。その後、当時の国会議員会館で兵本さんとお会いしました。在室していた共産党職員に『産経の記者です』と伝えるや、部屋中が異様な雰囲気になったことを覚えています。ただ、兵本さんは『拉致は重大な主権侵害であり、重大な犯罪である。共産党も産経も朝日もあるか』という一貫した考えをお持ちでした。私も同感です。容共も反共も関係ない。犯罪を追及・解明することは新聞記者なら当たり前の話です」。
事件当時、この事件を追いかけていたのは、阿部正美氏以外に朝日放送、そしてアエラの記者の三人だけであった。
このたびの上映公開に際し、野伏監督をはじめ、関係者の皆様にはこのように映画上映に漕ぎ着けたご苦労に敬意を表すとともに、私も微力ながらクラウドファンディングにご協力させていただいた。
今朝まで元気で学校に向かっていった我が子が、突然、消息不明となり、家に帰ってこない状態を想像してみてほしい。その家族は本当に平和状態だと言えますか。戦争がない状態だけが平和な状態なのか。他国に連れ去られた拉致被害者を救えないでどうして平和だと言えるのか。そして、国民はこの問題を我がことのように捉えているのだろうか。
こういった難解な問題を真剣に考えた千葉県八街市立朝陽小学校の5年生が令和元年、産経新聞東京本社を訪れ、「横田めぐみさんへ」と題した75人分の作文を届け、被害者の帰国を強く願う思いを綴ってくれた。小学生を指導した先生と真剣にこの問題に取り組んだ小学生に敬意を表すとともに、このように我が事のように捉える日本人が増えてくることを心から願う。
子供を殺める親、平気であおり運転をする者、「皆がしているから自分も」と迷惑を顧みず、事の真意を考えないで行動する者など、不道徳なニュースが毎日報道される。個人の主張だけが尊重され、公の問題は無関心。本当に考えさせられる。
日本は確かに豊かになった。しかし、日本人として大切な何かを失っている気がしてならない。私も他人事ではなく、我が事のように考え、そして拉致被害者奪還まで尽力していくと思いを新たにした本日である。
何れ、寺子屋「玉川未来塾」の企画するイベントで「映画『めぐみへの誓い』」を取り上げさせていただきたいと思う。こうして実行に移していくことが、この拉致事件解決の一歩につながるのではないかと考えるのである。そして、平成29年に実施した第9回正論シネマサロンを開催するに、上島元正論編集長に言われて叶わなかったことを実現し、少しでも拉致事件解決に尽力したいと誓ったのだった。